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No.015 長門有希 悪い魔法使いver. (Yuki Nagato Evil Witch Ver.) 情報 作品名 涼宮ハルヒの憂鬱 価格 3,000円(税込) 発売日 2008年09月26日2008年08月03日ワンダーフェスティバル2008[夏]大阪出張ブース(アニブロゲーマーズなんば店) 商品全高 約150mm 付属品 表情:×1 手首:×12(急須持ち手、ギターピック持ち手、ギターネック持ち手、スターリングインフェルノ持ち手) 共通付属品(スタンド、スタンド用アーム、収納袋) その他:帽子、マント、交換用マントパーツ、ギター、ギター用ストラップ、看板、看板用シール、スターリングインフェルノ×2(スペア1本)、急須、おぼん、湯のみ×2、シャミセン(猫) 画像 投稿できる方がいらっしゃいましたらお願いします。 キャラクター概要 長門有希 SOS団の自主制作映画「朝比奈ミクルの冒険」で文字通り悪い魔法使い役を演じた時の長門有希。 「ライブ ア ライブ」でもこの姿で文化祭の校内ライブに参加している。 その他は長門有希 制服ver.を参照。 シャミセン 映画撮影のさなかに涼宮ハルヒが野良猫の群れから適当に選び出したオスの三毛猫。 映画では悪い魔法使いを演じる長門有希の使い魔として出演している。 涼宮ハルヒの目が離れていた間に彼女の持つ力を受けて、突如喋りだしたときは他の団員4人を仰天させたのだったが、 文化祭終了後は何事もなかったかのようにただの三毛猫に戻り、キョンの家で飼われることになった。 商品説明 劇中の映画で登場した魔法使いバージョン。 文化祭での演奏シーンはマントを差し替えて再現。 マントを外すとカーディガン無しの制服姿に。 ワンダーフェスティバルで先行販売された「WF2008夏先行版」は商品の仕様は変わらずパッケージのみがモノクロ仕様。 良い点 悪い点 注意点 関連商品 涼宮ハルヒ 制服ver. 涼宮ハルヒ 夏服ver. 涼宮ハルヒ チアガールver. 涼宮ハルヒ 中学生ver. 涼宮ハルヒ 光陽園学院ver. 超勇者ハルヒ 長門有希 制服ver. 朝比奈みくる 制服ver. 朝比奈みくる チアガールver. 朝比奈みくる 戦うウェイトレスver. 朝比奈みくる 大人ver. キョン 制服ver. 古泉一樹 制服ver. 鶴屋さん 制服ver. 鶴屋さん 文化祭メイドver. 朝倉涼子 制服ver. コメント 何処からの情報ですか? -- 名無しさん (2008-06-24 17 14 47) 名前 コメント
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ハルヒ(…………) ハルヒ「あ、私用事があるんだった! 有希は大丈夫だと思うけど、キョン!問題はあんたよ!今日のシミュレーションを踏まえてきっちりと進路を決めなさい!」 キョン(……あんなのに意味ないだろ) ハルヒ「じゃあ、また明日ね!」 バタンッ みくる「…………はぁ、疲れました」 古泉「慣れないキャラは難しいですね。 それはそうとキョンさんの駄目男ぶり、なかなか見事でしたよ」 キョン「やってて気分が悪いな、あーいうのは」 みくる「それが社会のつらさなのかもしれませんね」 夜、キョンの部屋にて キョン「………だめだ。何も思いうかばん」 キョン(結局体良くハルヒに遊ばれただけじゃないのか…?) キョン「だいたいシミュレートしてるのは職業じゃなくて職に就いた人間の生活じゃないかアレは。 ……全く………」 ピンポ~ン キョン「ん?こんな時間に誰だ?」 ドタドタドタ…… キョン「はーい」 ガチャッ 長門「………」 キョン「おう長門か。どうした?」 長門「涼宮ハルヒの宿題」 キョン「あぁ、あれが?長門はできたのか?」 長門「……まだ。だからここへ来た。 一人よりも、二人のほうが早い」 キョン「………」 長門「………」 キョン(……親が留守だとはいえ、女の子をこの時間に自室に入れるのはいかがなもなか) 長門「………そろそろ開始めたい」 キョン「あ、あぁ」(まぁ相手はあの長門だし、問題ないか) 長門「………」ドサッ キョン「おわっ!?なんだこの紙の量は!?」 長門「給与水準等から優れた職業をピックアップした資料。あなたの力になる」 キョン「…そ、それはどうも」 ……… …… … キョン(これだけの資料があっても浮かばんもんは浮かばん) 長門「………」 キョン(…潜在意識として働くことを拒否してるのか?) 長門「……私のデータは」 キョン「いや、役に立ってるんだが、俺には荷が重すぎる職業ばかりだ」 キョン「弁護士は給与は高いが、司法試験は狭き門。会計士はそれより難しい。医者なんか生きた人の腹を切るなんてことは俺にはできない」 長門「……そう?」 キョン「あぁ」 長門「……私からも質問がある」 長門「あなたと行なったシミュレート」 キョン「あぁ、あれか。あれが?」 長門「………私の役割だったあの女性は、あなたたちから見るとどう感じるの…?」 キョン「…? あぁ、そりゃ不幸な女性さ。旦那にあんな扱いされて」 長門「何故」 キョン「何故って……飯作って待ってるのに帰ってきて『いらん』とか言われたり」 長門「………」 キョン「あと、その……女遊びが激しかったり」 長門「………幸せじゃ……ないの?」 キョン「それはないと思うけどなぁ」 長門「………理解した」 ガタン キョン「あれ?長門……。帰るのか?」 長門「私が長時間ここにいることは、あなたにとって問題かと思われる」 キョン(………否定はしない) キョン「進路志望調査、書けてないだろ?いいのか?」 長門「……涼宮ハルヒはあなたをマークしている。私が書かなくてもしばらくは問題ないと推測する」 キョン「……なるほどね」 キョン「ありがとうな。データ、助かる」 長門「問題ない」 キョン「……送ろうか?夜道は危ないし」 長門「……ここでいい」 キョン「……わかった。じゃ、また明日な」 長門「……(こくん)」 バタンッ 長門「……………」 ハルヒ「今日の放課後、マンツーマンで進路考えてあげる?」
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長門有希ちゃんの消失(アニメ) 概要 2009年7月4日発売の角川書店の漫画雑誌ヤングエース創刊号から連載を開始した、『涼宮ハルヒの憂鬱』のスピンオフの『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』のスピンオフ漫画となる。 長門有希が主人公だが、ハルヒちゃんとは違いラブコメ重視でギャグ漫画ではない。 2015年現在もヤングエースにて連載中。 2013年12月16日に、SOS団公式サイトのリンクにあるドコモ・アニメストアのページにてアニメ化企画進行中と発表された(ドコモのスマートフォンのみ閲覧可能)後に2014年9月4日の長門有希ちゃんの消失のコミックス第7巻にて2015年TVアニメ化決定と発表。 2014年12月18日には2015年春に放送開始と告知された。 キャストは旧作から継続。スタッフはプロデューサー、音楽プロデューサー音響監督、音響効果等を覗いてハルヒちゃん ちゅるやさん、涼宮ハルヒの憂鬱、涼宮ハルヒの消失シリーズから一新し、制作会社もサテライトとなった。 アニメの内容は、引っ込み思案でフツーの文芸部の部長である長門有希が朝倉涼子の協力を得て文芸部の部室にてクリスマスパーティーを開くまでを描かれる様子。アニメにおいては、原作第4巻「涼宮ハルヒの消失」・劇場版で描かれた消失の世界が、もしも最初からそうだったら・・・という世界観であるため超常現象も起きない。 和田監督曰くアニメにおいて、「ドラマそのものよりドラマの中でのキャラクターの感情を描きたいとのことで、長門有希ちゃんの普通の女の子として、楽しい世界で優しいみんなといっしょに暮らしている姿を愛でて欲しいと語っている。 漫画について詳しく知りたい方は『http //www39.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/39.html』へ。 長門有希ちゃんの消失のスタッフ(14/12/19更新)New! 長門有希:茅原実里 キョン:杉田智和 朝倉涼子:桑谷夏子 朝比奈みくる:後藤邑子 鶴屋さん:松岡由貴 谷口:白石稔 国木田:松元恵 古泉一樹:小野大輔 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希ちゃん消失のキャスト(14/2/28更新)New! 監督:和田純一 シリーズ構成:待田堂子 キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤郁子 美術監督:田尻健一 背景・ムクオスタジオ 色彩設定・谷本千絵 撮影監督・岩崎敦 撮影:T2スタジオ 編集:定松剛 音響監督:鶴岡陽太 音響効果:森川永子New! 音響制作:楽音舎 音楽:加藤達也 音楽制作:ランティス 音楽プロデューサー:齊藤滋・吉江輝成New! アニメーションプロデューサー;金子文雄・江口浩平New! 制作デスク:海上千晶New! 設定制作 松井明穂New! 企画/エグゼクティブプロデューサー:安田猛New! 統括プロデューサー:伊藤敦New! アシスタントプロデューサー:千葉誠・山崎聡New! 制作:サテライト 製作:北高文芸部詳しいスタッフはアニメ製作スタッフへ TVアニメ『長門有希ちゃんの消失』OP&ED(15/3/19更新)New! オープニングテーマ 『フレ降レミライ』作詞:畑亜貴 作曲:佐々倉有吾 編曲:渡辺和紀 歌:北高文芸部女子会(茅原実里、桑谷夏子、後藤邑子、松岡由貴、平野綾) エンディングテーマ 『ありがとう、だいすき』作詞・作曲:rino 編曲:Evan Call (Elements Garden) 歌:茅原実里 挿入歌 『見つけてHappy Life』(第8話)作詞:畑亜貴 作曲・編曲:橋本由香利 歌:朝比奈みくる(後藤邑子) 2006年に発売された涼宮ハルヒの憂鬱キャラクターソングVol.3朝比奈みくる収録曲より使用 『giragira shake』(第8話)作詞:真崎エリカ 作曲・編曲:酒井拓也 歌:キョン(杉田智和) TVアニメ『長門有希ちゃんの消失』の放送局(15/3/6更新)New! 放送地域 放送地域 放送局 放送期間 放送日時 系列 最速からの遅れ 東京都 東京MXテレビ 2015年4月3日- 金曜25時40分-26時10分 独立局 全国(BS) BS11 2015年4月4日- 土曜27時00分-27時30分 衛星(BS)放送 1日 全国(CS) AT-X 2015年4月4日- 土曜22時30分-23時00分RP1;日曜18時30分-19時00分RP2 火曜14時30分-15時00分RP 3金曜06時30分-07時00分 衛星(CS)放送 1日 千葉県 チバテレビ 2015年4月5日- 日曜24時00分-24時30分 独立局 2日 神奈川県 tvk 2015年4月5日- 日曜24時00分-24時30分 独立局 〃 埼玉県 テレ玉 2015年4月5日- 日曜24時00分-24時30分 独立局 〃 兵庫県 サンテレビ 2015年4月5日- 日曜24時30分-25時00分 独立局 〃 福岡県 TVQ九州放送 2015年4月5日- 日曜26時35分-27時05分 テレビ東京系列 〃 長野県 信越放送 2015年4月6日- 月曜25時55分-26時25分 東京放送(TBS)系列局 3日 岐阜県 岐阜放送 2015年4月7日- 火曜24時00分-24時30分 独立局 4日 三重県 三重テレビ放送 2015年4月8日- 水曜25時20分-25時50分 独立局 5日 ネット配信 dアニメストア 2015年4月9日- 木曜12時00更新 - 6日 ネット配信 楽天ショウタイム 2015年4月10日- 金曜12時00更新(1週間無料) - 7日 ネット配信 アニメパス 2015年4月16日- 木曜12時00分更新 - 13日 ネット配信 ニコニコ動画 2015年4月23日- 木曜12時00分更新 - 20日 ネット配信 バンダイチャンネル 2015年4月23日- 木曜12時00分更新 - 20日 ※RP=リピート放送 話数・サブタイトル(15/9/1更新) Blu-ray DVD情報よりTVアニメは16話、ただしOVAが2015年10月にコミックス9巻同梱で発売予定なためOVAも含めれば17話。 話数 サブタイトル 原作収録巻・話 脚本 絵コンテ 演出 作画監督 Blu-ray&DVD 第1話 大切な場所 原作1巻1-4話 待田堂子 和田純一 和田純一 今西亨 1巻 第2話 もろびとこぞりて 原作1巻5-7話 待田堂子 和田純一 飛田剛 井上英紀 1巻 第3話 涼宮ハルヒ!! 原作2巻8-10話 待田堂子 島津裕行 羽多野浩平 古澤貴文 2巻 第4話 Be my Valentein 原作2巻10-12話 待田堂子 竹下良平 竹下良平 川島尚、田中知江 2巻 第5話 彼女の憂鬱 原作2巻13-14話原作3巻15話 待田堂子 和田純一 近藤一英 青木美穂、大橋幸子北沢典子、長坂寛治丸山修二 3巻 第6話 Over the Obento 原作3巻16-19話 和場明子 羽多野浩平 羽多野浩平 古澤貴文、松本文男福世孝明 3巻 第7話 ねがいごと 原作3巻20-22話 根元歳三 竹下良平 安藤健 飯飼一幸、岩岡優子福世孝明、松本文男 4巻 第8話 涼宮ハルヒの謀 原作3巻23話 寺澤雄三 竹下良平 竹下良平 いとうまりこ、椛島洋介木野下澄江、清水貴子丸山修二 4巻? 第9話 その手を… 原作3巻24・25・26話 待田堂子 羽多野浩平 羽多野浩平 古澤貴文、福世孝明 5巻? 第10話 サムデイ イン ザ レイン(長門有希ちゃんの消失)? 原作4巻27話 和場明子 安田賢司 飛田剛 香川久、川島尚 5巻? 第11話 長門有希ちゃんの消失Ⅰ? 原作4巻28・29話 根元歳三 石平信司 古賀一臣 金田栄二、しまだひであき舘崎大、丸山修二 6巻? 第12話 長門有希ちゃんの消失Ⅱ? 原作4巻30・31話 根元歳三 安田賢司 大脊戸聡 斎藤圭太 6巻? 第13話 長門有希ちゃんの消失Ⅲ? 原作4巻32・33話 待田堂子 和田純一 ヤマトナオミチ 伊藤郁子、今西亨香川久、川島尚丸山修二 7巻? 第14話 彼女の戸惑い? 原作4巻34・35話 和場明子 竹下良平 竹下良平 本田創一、陣内美帆柳田幸平、服部憲知松本弘、吉井弘幸野口孝行、荒木裕 7巻? 第15話 彼の迷い? 原作4巻36・37話 待田堂子 水本葉月 水本葉月 古澤貴文、松本文男福世孝明 8巻? 第16話 花火? 原作5巻38話 待田堂子 和田純一 飛田剛 井上英紀、今西亨大橋幸子、川島尚清水貴子、陣内美保本田創一、丸山修二 8巻? OP&ED作画スタッフ オープニングアニメーション絵コンテ・演出 平池芳正 作画監督 今西亨・香川久 原画 浅野勝也 飯田剛士 氏家嘉宏 甲斐田亮一 椛島洋介 小松真梨子 式地幸喜 杉本功 谷口明弘 西川亮 福士真由美 藤本さとる 山本真理子 第二原画 伊藤真奈美、陣内美帆 動画検査 杉田真理 色指定検査 谷本千絵 エンディングアニメーション絵コンテ 和田純一 演出 竹下良平 作画監督 田中知江 原画 杉村友和、滝山真哲、浜中朋子 動画検査 杉田真理 色指定検査 谷本千絵 ラジオ(15/4/1更新)New! 一部通販サイトのCD情報にてオープニングテーマのカップリング曲がラジオのテーマソングだと発表されたためラジオがあると判明。ソース、2015年4月1日にラジオが正式発表 パーソナリティとコーナーそして公式サイトが開設http //lantis-net.com/nagato/され、2015年4月20日より配信開始。毎週月曜日22時更新。 ジングルは涼宮ハルヒの憂鬱SOS団ラジオ支部と同一なので懐かしくなること請け合い。 パーソナリティ茅原実里(長門有希役) 桑谷夏子(朝倉涼子役) コーナーパーソナリティ(スタッフ日記出張版)伊藤敦(統括プロデューサー)※第3、4回未参加 笠原周造(宣伝) ゲスト杉田智和(公開収録、第9回) テーマソング オープニング『ふわふわナカマでよろしくね』歌 - 長門有希(茅原実里) 朝倉涼子(桑谷夏子)(第1回~) エンディング『ありがとう、大好き』歌 - 茅原実里(第1回~) 放送回 放送回 配信日 選曲 文芸部日誌 長門有希ちゃんの空腹 朝倉涼子の夕食レシピ わが町レポート スタッフ日記の紹介物 備考 第01回 2015/04/20 フレ降レミライ 長門有希 ○ - - 原作コミックス8巻 第02回 2015/04/27 ありがとう、だいすき 朝倉涼子 - ○ - 長門有希ちゃんの消失 とある一日 第03回 2015/05/4 フレ降レミライ 長門有希 - - ○ 長門有希ちゃんの消失Blu-ray1巻 第04回 2015/05/11 ありがとう、大好き 朝倉涼子 ○ - - 長門有希ちゃんの消失Blu-ray1巻 第05回 2015/5/18 窓辺の予感 長門有希 - ○ - 長門有希ちゃんの消失×SHIROBACOコラボカフェ 第06回 2015/5/25 しあわせは日常のなかで 朝倉涼子 - - ○ 善光寺のお守り 第07回 2015/6/1 探していた風景 長門有希 ○ - - - 第08回 2015/6/8 LOVE EDITION 朝倉涼子 - ○ - - 第09回 2015/6/15 - キョン - - ○ - 公開録音 第10回 2015/6/22 恋はミらいからクル? 長門有希 ○ - - - 第11回 2015/6/29 愛の門番EXTRA 朝倉涼子 - ○ - - 第12回 2015/7/6 太陽とデイジー 長門有希 - - ○ - 第13回 2015/7/13 Dreamerという冒険者 朝倉涼子 ○ - - - 第14回 2015/7/20 錯覚Loving you 長門有希 - ○ - - 第15回 2015/7/27 福が来たりて風が吹く 朝倉涼子 - - ○ - 第16回 2015/8/3 フレ降レミライ 長門有希 ○ - - - 第17回 2015/8/10 ありがとう、だいすき 朝倉涼子 - ○ - - 第18回 2015/8/17 ふわふわナカマでよろしくね 長門有希 - - ○ - 第19回 2015/8/24 フレ降レミライ(長門Ver.) 朝倉涼子 ○ - - - 第20回 2015/8/31 ハレ晴レユカイ 長門有希 - ○ - - 第21回 2015/9/7 冒険でしょでしょ? 朝倉涼子 - - ○ - 第22回 2015/9/14 コーナー ショートドラマ(コント)タイトルコールの前に始まるキャラの掛け合いのラジオドラマ。 ふつおた!ふつうのおたよりを読むコーナー 長門有希ちゃんの空腹 視聴者のグルメ情報を募集するコーナー。長門有希ちゃんが大食らいであることに由来するらしい。 朝倉涼子の夕食レシピいつも料理を作る朝倉さんに着想を得た視聴者から「お手軽に安くできるレシピ」を募集するコーナー。朝倉さんが「それあり」、「それ無理」で判定する。 わが町レポート(第3回~)あなたにとって大事な場所はちゃんとそこあるかなど、自分が関わった思い出深い所についてレポートするという、涼宮ハルヒ消失をモチーフにしたコーナー。 スタッフ日記ラジオ出張版公式サイト上にあるスタッフ日記の出張版ということで、文芸部仮部員となったスタッフによる宣伝コーナー。 ●●の文芸部日誌パーソナリティのキャラになりきりラジオで配信された回の話された事をまとめて言うコーナー。 イベント(15/5/7更新)New! AnimeJapanトーク&ミニライブ2015年3月21日に幕張メッセにて開催予定。長門有希役の茅原実里とキョン役の杉田智和が出演 同日にサテライトブースにて長門有希役の茅原実里と和田純一監督、金子文雄アニメーションプロデューサーによる放送直前ステージが開催された。 また21・22日にイベントとしてKADOKAWAブース、サテライトブース、TOKYO MXブースにて「長門有希ちゃんの消失」スタンプラリーが行われる。 TVアニメ『長門有希ちゃんの消失』の先行上映イベント2015年3月22日に角川シネマ新宿にて開催。トークも行うと予定されており。長門有希ちゃんの消失の世界の北高校生組総出演の豪華声優陣茅原実里・杉田智和・桑谷夏子・後藤邑子・松岡由貴・白石稔・松元惠らが出演と発表されたが、小野大輔、平野綾もサプライズで登場した。物販も行われたほか、当選来場者特典としてシナリオ第1話の冊子が付いた。 2015年5月31日にアニメイト主催で『「長門有希ちゃんの消失」Blu-ray DVD発売決定記念イベント 北高文芸部部活動発表会』が開催される。ソース出演は茅原実里、桑谷夏子のほかにゲストで杉田智和が参加する。内容はラジオの公開録音と茅原実里によるミニライブ。応募資格はアニメイトの参加券配布店舗てBlu-ray DVDの全巻予約(内金)することが条件である。 キャラクターソング(15/3/13更新) 長門有希ちゃんの消失においてもキャラクターソングが発売される予定。今回は愛をテーマにしており、各キャラ2曲+フレフレミライのソロバージョンで3曲。なお第1期のキャラクターソングをイメージとした歌名となっている。 Vol.1 TVアニメ 長門有希ちゃんの消失 CHARACTER SONG SERIES “In Love” case.1 NAGATO YUKI 長門有希 2015年5月27日発売 Vol.2 TVアニメ 長門有希ちゃんの消失 CHARACTER SONG SERIES “In Love” case.2 ASAKURA RYOKO 朝倉涼子 2015年5月27日発売 Vol.3 TVアニメ 長門有希ちゃんの消失 CHARACTER SONG SERIES “In Love” case.3 ASAHINA MIKURU 朝比奈みくる 2015年6月24日発売→7月22日正式版発売 Vol.4 TVアニメ 長門有希ちゃんの消失 CHARACTER SONG SERIES “In Love” case.4 TSURUYASAN 鶴屋さん 2015年6月24日発売 Vol.5 TVアニメ 長門有希ちゃんの消失 CHARACTER SONG SERIES “In Love” case.5 SUZUMIYA HARUHI 涼宮ハルヒ 2015年7月22日発売 放送されるまでの経緯 2013年12月16日……SOS団公式サイトのリンクからドコモ・アニメストアのサイトにてアニメ化企画進行中と発表。 2014年8月3日……「フィーバー涼宮ハルヒの憂鬱」のムック(カドカワムックレーベル/角川書店BC)KADOKAWAより長門有希ちゃんの消失のアニメ化についても触れられており、続報を待てと発表された。 2014年8月お盆頃……アニメスタッフが作者のぷよと西宮市においてロケハンとしたとのこと。(ヤングエース9月号にて兵庫に行ってきますとの作者コメあり)他情報源 2014年9月4日……コミックス7巻の帯とヤングエース2014年10月号にて長門有希ちゃんの消失が2015年TVアニメ化決定と発表された。 2014年12月18日……公式サイト上で長門有希ちゃんの消失のスタッフ・キャスト制作会社とキービジュアルが発表された。コミックナタリーでは監督キャラデザシリーズ構成制作会社以外のスタッフの情報も掲載された他、平野綾スタッフTwitterにて放送が2015年春ということが発表されている。後に公式サイトにおいても2015年春放送開始と告知された 2015年1月10日……月刊ニュータイプ2015年2月号にてアニメ『長門有希ちゃんの消失』の初版権が掲載された。北高内の教室で椅子に座りつつメガネをかけている長門のイラストである。原画はキャラクターデザインの伊藤郁子。長門有希役の茅原実里のインタビューが掲載されている。まだインタビュー当時ではアフレコは始まっておらず、長門有希ちゃんの消失の世界観に合わせて演技についてスタッフと話合っている段階だという。またハレ晴レユカイを踊りたいという意欲も語っていた。 2015年1月23日……2015年3月21・22日開催のAnimeJapanにて長門有希ちゃんの消失のステージが21日土曜日に開かれることが発表された。内容はトーク ミニライブで出演者は茅原実里と杉田智和。 2015年1月30日……娘TYPE2015年3月号にアニメ版権のピンナップ掲載。長門有希と朝倉の教室での昼食シーンのイラスト。原画は井上英紀。アニメの内容は文芸部室でクリスマスパーティーを開く計画を立てた長門は朝倉の手助けを借りて実現へ向けて頑張るという話らしい。 2015年2月12日……一部通販サイトにてオープニングCDの情報解禁。『フレ降レミライ』が4月29日発売ということと北高文芸部女子会というユニットで、茅原実里、桑谷夏子、後藤邑子、松岡由貴、平野綾の5人が歌うことが発表された。[[ソース http //www.neowing.co.jp/product/LACM-14342]2015年2月15日……上記CDにてオープニングテーマのカップリング曲はラジオテーマになることが判明し、長門有希ちゃんの消失はラジオを行うことがわかった。[[ソース http //www.neowing.co.jp/product/LACM-14342] 2015年2月13日……2015年3月22日に角川シネマ新宿にてTVアニメ『長門有希ちゃんの消失』の先行上映イベントが開催されることが発表された、出演者は茅原実里・杉田智和・桑谷夏子・後藤邑子・松岡由貴)・白石稔さん・松元惠さんの5人でトークも行われる予定、また特典として第1話のシナリオ集も付くとのこと。チケット価格は3500円。 2015年2月17日……公式サイトがリニューアル 正式開始そしてサイト変更がなれるとともにメインキャラクターの9人キャラデザインが公開された。またTwitterアカウントも掲載されている。 2015年2月20日……公式サイト上のキャラクターデザインのうち決定稿ではない仮色設定が公開された。公開されたキャラクターは長門・朝倉・キョン・朝比奈・鶴屋さん・古泉・ハルヒの7人。 2015年2月23日……放送局が東京MXテレビのみ公開され、東京MXテレビの放映開始 時間も4月3日金曜25時40分より放送と発表された。なお前番組の角川枠のISUCAである。 2015年2月24日……キャラデザインのうちギャグ顔の線画が公開された。公開されたのは長門・朝倉・キョン・朝比奈・鶴屋さん・古泉・ハルヒの7人。 2015年2月25日……東京MXテレビ以外の放送局が発表された。TVQ九州放送とAT-Xのみ放送開始日程が発表されたが(上記参照)今回発表された、tvk、テレ玉、サンテレビ、チバテレビ、岐阜放送、三重テレビ、信越放送、BS11の時間帯や放送開始日時は不明。 2015年2月25日……同日に、2015年4月1日より角川スニーカー文庫にて長門有希ちゃんの消失の公式ノベライズ『長門有希ちゃんの消失 とある一日』が発売されると角川スニーカー文庫公式ツイッターにて発表された。形式としては4コマ漫画小説。著者はGJ部の作者の新木伸。北高文芸部での穏やかな日常描くらしい。カバーイラストはぷよ描きおろしとのことで、谷川流が執筆に絡んでることはない模様。 2015年2月26日……チバテレビ、テレ玉、tvk、サンテレビの4局の放送開始日程と放送時間が公式サイト上にて発表された。 2015年2月27日……公式サイト上にてスタッフキャストページ更新。OPが正式に北高文芸部女子会が『フレ降レミライ』を歌うことが発表された他、スタッフに統括プロデューサー、音楽プロデューサー、制作デスク、設定制作、アニメーションプロデューサー、音響効果等が追加された。伊藤プロデューサー、音楽Pの斎藤滋プロデューサーはシリーズ通しての継続である。伊藤プロデューサーはぷよ曰く、キャラクターの語調をチェックしている模様。 2015年2月27日……BS11の放送時間・放送開始日程が公式サイト上で発表された。 2015年2月28日……娘TYPE2015年4月号にアニメ版権のピンナップ掲載。長門有希ちゃんが寝巻き姿で怒れる朝倉さんがメガネを回収してしまうという図であった。 2015年3月2日……岐阜放送・三重テレビ放送の放送時間・放送開始日程が公式サイト上で発表された。 2015年3月6日……信越放送の放送時間・放送開始日程が発表されるとともに、メインキャラ7人が描かれた第二弾キービジュアルが公式サイト上で発表された。 2015年3月10日……ニュータイプ2015年4月号が発売され版権が描かれるとともに、杉田智和のインタビューが掲載された。また別の頁では和田監督のインタビューが掲載されている。 2015年3月10日……コンプティーク2015年4月号が発売された、発表はキャラデザ等が掲載された既報のみで特集は1ページ。 2015年3月11日……公式サイト上で東京MXテレビ版の番組宣伝CM(15秒版)が公開された。ナレーションは茅原実里であるがBGMはフレ降レミライか?本編映像が使用されている。 2015年3月12日……エンディング曲が解禁され、茅原実里が歌うことが発表された。タイトルは「ありがとう、だいすき」である。アニメ版とアーティスト版の2バージョン発売予定作詞作曲者は不明。 2015年3月13日……アマゾン等ネット通販サイトにおいて、長門有希ちゃんの消失のキャラクターソングが5月から7月にわたって発売されることが発表された。現在5枚まで発売情報が公開されており、5月に長門有希と朝倉涼子、6月に朝比奈みくると鶴屋さん、7月に涼宮ハルヒが発売される予定。 2015年3月18日……10月に発売する長門有希ちゃんの消失コミックス第9巻の限定版のBlu-rayにおいてOVA25分が収録されることがコミック既刊の折込チラシにおいて発表された。その他は不明。 2015年3月21日……AnimeJapanのBLUEステージにてトーク ミニライブが開催。出演は杉田智和と茅原実里。茅原は優しい忘却、「雪、無音、窓辺にて」、「ありがとう、だいすき」を歌唱。(ソース) 2015年3月21日……上記イベントのサテライトブースにて茅原実里 和田監督 金子アニメーションPによるトークショー開催。 2015年3月22日……角川シネマ新宿にて第一話先行上映会 トークショーが開催。サプライズで小野大輔と平野綾も駆けつけ、発表されているメインキャスト全員が登壇した。レポートはこちら 2015年3月24日……公式サイトにて杉田智和ナレーションの1分PV公開。BGMは『亡き王女のためのパヴァーヌ』 2015年3月30日……娘TYPE5月号に長門有希ちゃんの消失版権イラストと、茅原実里の簡単なインタビューが掲載。 2015年4月2日……公式サイトにてラジオ開始を正式発表。パーソナリティは茅原実里 桑谷夏子で4月23日からランティスネットラジオにて毎週月曜22時より配信予定とのこと。 外部リンク(15/4/3更新)New! 長門有希ちゃんの消失アニメ公式サイト アニメ長門有希ちゃんの消失公式Twitter ラジオ「北高文芸部ラジオ支部」公式サイト 長門有希ちゃんの消失チャンネル
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効果モンスター/レベル12/神属性/宇宙人族/攻撃力4500/守備力4500 このカードの効果は無効にできない。 このカードの効果または発動を無効にする効果を無効にし破壊できる。 このカードが持ち主以外のフィールド上に存在する場合、 このカードのコントロールは持ち主に移る。 自分フィールド上に「長門」と名のつくカードが 2枚以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。 このモンスターはカード効果では破壊・ゲームから除外されない。 このモンスターの召喚は無効化されない。 このモンスターの召喚・特殊召喚・特殊召喚に成功した時、 相手はカード効果を適用できない。 このモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、 以下の効果から1つを選択して発動できる。 ●相手の手札を全てゲームから除外する。 ●相手フィールド上に存在するカードを全てゲームから除外する。 ●相手の墓地に存在するカードを全てゲームから除外する。
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長門有希の書肆(しょし) ※この物語は涼宮ハルヒの憂鬱にサブタイトルの小説を掛け合わせてみたものです。クロスオーバーという ほどでもなく、ハルヒさえ知っていれば小説のほうは未読の方でも充分楽しめるものとなっておりますので どうぞお気兼ねなく読んで頂いて結構です。興味がありましたらぜひ小説のほうも読まれるといいでしょう。 [ニューロマンサー] 「涼宮ハルヒに特別な干渉をしているあなたの情報を得たい。協力して欲しい」 無感動な双眸を真っ直ぐ据えた長門はぽつねんとパソコンの前に立っていた。 「お前からのたっての希望ならもちろん吝かじゃあないが、具体的に何をすればいいんだ……」 長門に促されてパソコンの席に座ると、黒いパイル地の汗止め(スウェットバンド)を渡された。 「なんだこれ……」 「皮膚電極(ダーマトロード)」 訝しがっている俺の表情を目に映して長門は説明を始める。 「あなたの情報の入手と同時に幾つかの試験も行いたい。しかし現状次元のままでは情報操作だけでは試しき れず、またそのリスクとは裏腹にあなたが入手する情報量は極めて微少であろうと判断した。そこで、この原 始的なネットワークに私のネットワークをリンクすることによって構築される電脳空間(サイバースペース) にあなたが接続することで、あなたの情報を得ると同時にあなたの意識のみでの模擬実験を試みることにする。 その接続端子がそれ、額に巻いて」 言われるがままに電極とやらをおでこに巻くとパソコンが起動した。が、HDDやファンが稼動する低めの騒音 は聴こえず、画面には不恰好なハチマキをした訝しがってる男の顔が暗闇の中に浮き出ている。 「眼を閉じて」 眼の裏の、血に照らされた闇の中、銀色の眼閃が空間の端から渦巻くように流れ込み、催眠的映像が、滅茶 苦茶に齣(こま)をつなぎあわせたフィルムのように走り過ぎる。記号、数字、顔──ぼやけて断片的な視覚 情報の曼陀羅(まんだら)。 どこかで自分が驚いているのがわかった。しかし、既に意識だけが空間に浮かぶように佇んでいる。空間は 空きチャンネルのTVの色の空、緑地に等間隔の黒色方形網の床、全方面が見果てのない地平線のみ。 閉鎖空間とは異なるデタラメさが静かに形作っていた。 「ここは……」 「電脳空間」 と長門が後ろで応える。振り向くと、近いんだか遠いんだかわからないところに長門がやはりぽつねんと立 っていた。北高の制服に黒いカーディガンに青地の文庫本で、 「この空間は私のネットワークとの仲介地点を担うパーソナルコンピュータの原始的ネットワーク。ここで私 とあなたを繋ぎ、試験する」 半歩前で長門が広げた両手をゆっくり上げ、ハンマーで殴ったような衝撃が頭上に響く。 燦然と輝く夕日に燃やされた部室は無人のためもあってかひどく淋しげだった。長机や折りたたみ椅子から 伸びた影に縁取られ、部屋は綺麗な黒と淡い紅の妙な縞になっている。かすかなお茶葉の芳香が鼻を掠めた。 椅子に座ったまま何をするでもなくぼんやりしていると、そのうちに黄色い月が空にかかり始めた。色はある が光がない。青白い光が空に流れていて、暗闇にぼやけ始めた室内に蛍光灯の灯りを点す。 真夜中になって外へ出た。下校途中にある家々には暖かい光が溢れていたが、誰ともすれ違うことはない。 十字路の真中に俺の自転車が立っている。鍵は開けられており、どこにも傷や壊れた箇所などはない。暗闇の 深淵の中、俺はそれを走らせてある場所へと向かった。 SOS団御用達の喫茶店には既に見慣れた面子が揃っていた。他の客や店員はいない。 「遅いわよキョン! 罰金ね!」 と怒鳴った我らが団長様の声は静かな店内にはいささか響きすぎる。朝比奈さんの笑顔と古泉のニヤケ顔にも 迎えられたが長門の姿だけはどこにも見当らなかった。 「それで」 俺は朝比奈さんの隣に座りながら、 「何が目的だ……」 「どうしてすぐに気付いちゃったのかしら」 とハルヒはアヒル口を作り、 「勘付かせる間を与えたつもりはなかったはずなんだけど」 「直前の長門の表情からなんとなく、だ。ミリ単位ほどのものだったが明らかに「迂闊」とでも言わんばかり に目を瞠(みは)っていたからな」 「その細微な手掛かりからよくここまでの機微を推察できましたね」 と古泉がオーバーに肩を竦め、 「見事の一言に尽きます」 くすりと朝比奈さんは微笑み、 「でも今回はわたしたちの勝ちですね。現在のキョンくんの脳波は水平線(フラットライン)を示しています。 このまま後数分でキョンくんは死にます」 今回はということは急進派のほうか。九曜の天蓋領域とやらのほうも考えてはいたが、こっちだったか。 「日が暮れたころから脳波が停止しているのなら、もう随分時間が経ってるはずだが」 「こちらの仮想空間の時間に対して現実空間で実際に経過した時間はまったく微々たるものです。あちらのあ なたが死亡するまでには数分のみですが、こちらのあなたは充分一生を過ごすことができるでしょう」 ハルヒが身を乗り出して、 「だからキョン、あんたはここで残りの人生を過ごすことになるの。こんな事をいきなり言われて吃驚するの はあたしもわかるわ。けど安心なさい! 団長様からのせめてもの慰めに、あんたが望むのなら何でもやって あげるわ」 とやたら嬉しそうに言い、 「なんならみくるちゃんも好きにしていいわよ」 とあろうことか朝比奈さんに指を突きつけた。 朝比奈さんがえぇっと赤く熟れていくのを尻目に、 「いや、いい」 と何時の間にか目の前にあったミントティーを口にして、 「じきに長門が助けにくるさ」 ムッとしたハルヒは唇をへの字に曲げてチュゴゴゴとアイスコーヒーを飲み干した。 痛いほど澄み切った空気をカランコロンという鐘音が引き裂く。見ると長門がゆっくりこちらへ近づいてき ており、一瞬だけいつものSOS団活動の心境に錯覚しかけた。 「助けにきた」 と俺の手を取り、 「急ぐべき」 「今度は完璧だと思ったんですが、どうやら失敗のようですね」 と人事のように古泉は言う。 「侵入を許してしまった時点でわたしたちの負けです」 と朝比奈さんは哀しそうな笑顔を向けた。 ハルヒはというと先ほどまでの挙動が嘘のように大人しくなり、静かな瞳で俺を見据えていた。何かを期待 した俺の腕を引いて長門は喫茶店の戸口をくぐる。 「キョン」 反射的に振り向いてしまった。不意に呼ばれたからでもあり、声がとても切なかったからでもある。 「あたしたちは確かに仮想空間に作られただけの複製でしかないけど、その情報源になってるのはあんたの頭 の中の記憶からなの。それは現実的に見ればひどく不完全なものに見えるかも知れないけど、でもある意味で は 究極的 でもあるのよ」 仮想空間という、虚無に等しい世界に0と1の羅列のみで構成されているはずのハルヒが微笑みながら声を上 ずらせている。涙が一筋、右頬を伝った。 「その心は、あたしのこの気持ちは、決して偽りのものなんかじゃないの。だから、キョン──」 「もう駄目」 と長門が再び俺の腕を引いた。先ほどより若干強く。 「これ以上はあなたの生命に関わる。早く。眼を閉じて」 遠ざかる情景を後ろに固く眼を閉じる。ハルヒの最後の声がしばらく耳に纏わりついて離れなかった。 意識が身体へと帰り着いたとき最初に気付いたのは垂れ流しまくった涙と鼻水に、ひどい喉の渇きだった。 次いで、何かが焦げていることに気付きそれが自分のおでこであることわかった。 長門が俺に接続しようとした瞬間を急進派が狙っていたんだそうである。しかし俺の万事を騙すことができ ず、またすぐに長門の解析・侵入が成功したことによって暗殺計画は結実することなく散ることとなる。あの 仮想空間は既に消去されてしまったのだとか。それと数秒間ではあるがやはり脳波は止まっていたらしい。が、 長門が言うには心配ないんだそうだ。 「ごめんなさい」 と長門は一言謝ったが、俺は何も言わなかった。 後日、恒例不思議探索のルーチン化した日程を過ごしたときである。燦然と燃え上がる夕日に照らされて 「またね!」 と言って別れるハルヒの満足の笑みに、 あの時 のハルヒも同じような笑顔であったのだろうかと思い出し、 心臓が握り潰される心持がした。
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四 章 電話を切ってベンチから立ち上がり、軽いめまいに似た妙な達成感に浸っているところで携帯がブルブル震えた。ハルヒに電話するのをすっかり忘れていた。 『キョン、ずっと話中だったけどどうしたの』 「ああ、中河と話してた」 ハルヒはクククと漏らすような笑い声を出しながら、 『で、で、ひとりの女をめぐって男同士のケリをつけたのね?』 「別に決闘を申し込んだわけじゃないさ。あいつは知らなかったんだよ、俺と長門が付き合ってることを」 『へー。世の中にはあんたより鈍い男がいるのね、見直したわ』 それは褒めてんのかけなしてんのかどっちなんだ。 「長門と一緒に会社経営したかったんだとさ。昔と変わらず熱に浮かされてるっていうか夢見がちっていうかな」 『前言撤回、中河さんはあんたよりずっと情熱的だわ。好きな人と仲むずまじく会社を運営していくなんてロマンがあるじゃないの』 冷めてて悪かったな。俺のロマンスは爬虫類並みの体温かもしれんが、あんなゴジラ級アメフト野郎のどこがいいのか教えてくれ。 「買収の話はあきらめるらしい」 『そう。まあ有希が乗り気じゃないみたいだし』 「買収はきれいごとだけじゃないからな。SOS団が汚い金にまみれるのは俺も見たくない」 『そうね。これで反対票が二人になったわね、あたしも考え直すわ』 収入のほとんどを長門テクノロジーに頼っている我が社の状況から言えばあいつの票は俺の三人分くらいは裕にあると思うが、しがらみってやつを好きになれないのはハルヒも同じだと思う。 『それで有希はどうしたのよ、あんたちゃんと謝ったの?』 「ああ、ずっと喜緑さんちにいるらしいんだが、会ってはくれなかった」 『やっぱりね。有希はあんたにかなりがっかりしてるわよ』 俺ばかり責めないでくれ。 『あんたがどうでもいい態度を取るから悪いんでしょ、自覚しなさいよね』 「それは十分分かったから。ここんとこ胃がキリキリ痛んでつらいんだからな」 『あんたにはちょうどいい薬よ』 ハルヒは笑った。俺の性格にまともに効く薬があったら一ダースでも欲しいもんだ。ハルヒは自分がシアワセなもんだから、余裕で他人の恋愛を批評しやがる。 ハルヒが俺の手を離れたことは俺にとっちゃ万歳三唱でも脱帽旗振れでもするところなのだが、長門がもし俺の前から消えてしまったらどうなる?俺のことを三年プラス五年も待ちつづけてくれた長門有希が、とうとう愛想を尽かしてしまったらどうするんだ?あいつにとっちゃゆるやかな恋愛のほうがいいだなんて、実は自分に都合のいいように解釈してただけじゃないのか。あいつの本当の願望が何なのかすら、いまだに分かってないのに。 「いいや、それは違うぞ」 自分で自分に説教するなんてのは誰もやらんだろうが、ボソリと口をついて出た。あいつのことは分からなくてもいいんだ。分かっていなくても俺はあいつを手放したくない。独りにしてはいけないのは長門じゃなくて、俺が独りになりたくないんだ。 自分が何が欲しいのかやっと分かった。もう前借りでもローンでもなんでもいい、今すぐダイヤの指輪が欲しい。 『なにが違うってのよ』 「なんでもない今のは独り言だ。ハルヒ、ちょっと今から会えないか」 『何言ってんの、もうお酒飲んでしまったわよ』 「相談したいことがある」 『もう、めんどくさいったらないわね。車で迎えに来なさい』 俺の思いつめた声で雰囲気を察したのか、ハルヒはそれ以上は怒らなかった。 そこから一度自宅に戻り、車のキーを取ってまた出かけた。ハルヒのアパートの前で車を止めてクラクションを鳴らすと、ドアが開いてブラウスに膝までのジーンズに雪駄履きのハルヒが出てきた。なんて格好してんだ。 「いい?あんたのおごりだからね」 分かったから、とりあえず乗れ。 「ちょっと相談があるんだが」 「なによ、できることとできないことがあるけど」 「こんなときになんだが、退職金を前借りできないか」 「はぁ?そういう話は職場でしなさいよね」 近場の喫茶店に入った。酒場でもよかったんだが、どうもこういう話をするのに酒を飲むのは不謹慎な気がしてな。 「それで、なんでそんな急にお金が必要なのよ」 「長門にプロポーズしようかと思うんだが」 こいつとの付き合いも長いが、相談ごとを持ちかけるのははじめてかもしれない。それも結婚の相談と来た日にゃ、俺もかなり思いつめているということだな。 「そう。有希にもとうとう春が来たのね……。今まで努力した甲斐があったわ」 ハルヒが目頭をおさえて……口元はニヤニヤ笑っていた。お前がなにをどう努力したんだ。 「なに言ってんの、あたしはこれでも団員のシアワセのために尽くしてきたんだからね」 「じゃあその、団員のシアワセためにボーナスを前借りさせてくれ」 「取締役にボーナスはないでしょ。あんた、貯金いくらあんの」 「三十万、くらいしか」 「あたしが五十万カンパするから、それでエンゲージリングを買いなさい」 「それはありがたいんだが、カンパじゃなくて貸すってことにしてくれ」 ハルヒにお恵みを受けるなんて夜眠れなくなる。 「いいわ、催促はしないから。キヒヒヒ」 なんだその不吉な笑いは。これでまたハルヒに弱みを握られてしまうかと思うとため息のひとつも漏れそうだが、まあ弱みのストックはまだあるわけでひとつくらい増えたところで変わりはしないだろう。 「サイズは分かってんの?」 「ああ、九号だ。前にイエロートパーズをやった」 「じゃあついでにマリッジリングも買いなさい」 「それはまだ早いだろ。そんとき長門とジュエリーショップに行くほうがいい」 「そう、じゃあそれでもいいわ。問題は明日中にサイズを揃えてくれる店があるかどうかね」 「明日って、いくらなんでも急すぎんだろ」 「あんたはモチベーションが下がるのが早いから、思い立ったらすぐやんなさい」 高モチベーションだけで生きてるお前に言われちゃ、グウの音も出ないよ。 「ともかく、店のほうはあたしが手配するから、貯金降ろしておきなさい」 「現金でか」なぜか所はばかるように声を潜めて言った。 「あったりまえじゃないの。あたしたちの就業年数で八十万をカード決済できるわけないでしょ。即金で買いなさい」 明日、現ナマで三十万を持ち歩くのか。ボディガード付けたほうがいいんじゃないのか。 翌朝、長門から休むと連絡があった。長門から直接ではなく喜緑さんからだった。あいつこのままやめるつもりじゃあるまいな。まあ待ってろ、今日はなんとしてでも会いに行く。一軒ずつドアを叩いてでもな。 ハルヒが指輪の手配は任せろというから情報戦でも仕掛けるのかと思っていたが、なんのことはない、手当たり次第に電話をかけまくっているだけだった。 「もしもし、予算八十万くらいで九号のサイズのダイヤの指輪在庫ある?ない?あっそう分かった」ガチャン。 「ええと次はっと」 分厚いイエローページをめくって一軒ずつシラミつぶしらしい。 「僕も手伝いますよ。こういう手配ならお手の物です」 「さっすがはあたしの古泉くん、頼りになるわ」 「涼宮さんのためなら、たとえ火の中、水の中」 ハルヒは古泉のほっぺたにチュと音を立ててキスをした。やれやれ、お熱いことで。本当に溶鉱炉の中にでも突っ込んでもらいたいところだ。 古泉が携帯電話で誰かに問い合わせ、たぶん機関のお抱えの宝石商かなんかだろうが、朗報を伝えてきた。 「夕方までにならなんとかサイズ調整するそうですが、どうします?見てみますか」 「時間が惜しいわ。数点をデジカメで撮ってメールしてもらって」 「かしこまりました」 数分後、古泉宛にメールが送られてきた。 「これ、これにしなさいキョン。ピンク系のダイヤ」 知らなかった、透明だと思ってたダイヤにもほんのりだが色がついてたんだな。 「なんだかインスタントすぎないか。もっとゆっくり品定めしたかったんだが」 「今まで十分に時間があったのに、さぼってたあんたが悪いんでしょ」 「分かってるって。まあ、俺はいいんだが指にはめるのは長門だからな」 「好きな人からもらえるならなんでもいいのよ。ダイヤなんてただの炭素の塊だわ」 それを言っちゃおしまいだろうが。鉛筆の芯でも指に載せてろってのかよ。 結局その、ハルヒのお気に入りというダイヤを頼むことにした。 「手配できました。細工が済んだら連絡をくれるそうです」 「キョンいいわね?連絡が来たらダッシュで受け取りに行くから、二十四時間体勢で待機してるのよ」 はいはい。まるで自分のプロポーズみたいじゃないか。古泉を見ると細い目で俺たちを見て笑っている。余裕かましてるなこいつ、明日はお前の身に降りかかることかもしれんぞ。 「僕はちゃんと計画性を持って行動していますからね」 いまいましい、ああいまいましい。 夕方五時ごろ、古泉の携帯が振動した。俺とハルヒはビクッと飛び上がった。 「すいません、間違い電話でした」 なにやってんだ俺たち。結局店から電話があったのは六時過ぎてからだった。 「そろそろ出かけましょう。用意はよろしいですか?」 「ラジャ」 「らぢゃ!」 なぜか意味もなく敬礼などしている俺たちである。ハルヒも楽しいのは分かるがそこまで付き合わなくてもいいのに。古泉のBMWに飛び乗り隣の街まで高速を飛ばした。 ジュエリーショップなど滅多に来るもんじゃないんだが、というよりはじめてだな。前に長門に指輪を買ってやったときにはネット通販で選んだからな。 店員が白いジュエリーケースをうやうやしくトレイに乗せて持ってきた。ふつうより大きめの、タバコの箱くらいのサイズだった。うやうやしくフタを開けるとまわりにぱっと光が散った。手をかざすとダイヤから放たれた光の点々が映っている。これは美しい。 ダイヤの光の屈折の角度を計算して面を作ったとかいう、確かええっと、 「ブリリアントカットですね」 「今そう言おうとしてたんだよ」 カットした面が五十八面あるというこの輝きは確かにきれいだ。本物を手にしたのははじめてな気がする。おふくろが持っているのは知っていたが、一度も触らせてくれなかった。 「なかなかいいじゃないの」 「このランクにしてはかなりお買い得ですね」 「注文したのって指輪だけだよな。このイヤリングはなんだ?」 ジュエリーケースにはひとつの大きな点と二つの小さな点が光っていた。 「ああ、それはさる方からの贈り物です」 「俺がいくら動物が好きだからって猿からもらうわけにはいかんぞ」 「指輪とイヤリングのセットをプレゼントすると、長門さんに約束したのでしょう?」 華麗にボケてみせたのにスルーしやがったなこいつ。それになんであのときの会話を知ってんだ、と怪訝な顔をして見せたらハルヒがニヤリと笑っていた。情報漏れはこいつか。 「鶴屋さんからのプレゼント、ということにでもしておきましょうか」 なるほど、出所は機関ってことか。また借りができてしまった。 「ではお会計を」 現金で札束を見せても店員は驚いた様子はなく、丁寧に二度数えていた。即金で買う客って俺たち以外にもいるのか。 「稀にですが、いるらしいですよ」 「ふつうはローンとか銀行振込だとかだと思ってたが」 「まあ宝石を買うような金額を生で持ち歩くのは危険ですからね。月賦や金利なしボーナス一括払いなどのほうが多いでしょう。ブライダル専用ローンなどもあります」 どっちが店員か分からんような営業スマイルで解説する古泉は、すぐにでも宝石商に転職できそうだった。 「それからこれは、涼宮さんに」 古泉は店員から小さなケースを受け取り、ハルヒに差し出した。 「まあっ」 ハルヒの目が少女漫画のようにキラキラと輝いた。 「急なので、指輪ではありませんが」 箱を開けると薄紫色のピアスが入っていた。古泉はピアスをハルヒの耳につけてやり、鏡を見せた。 「あたしたちの記念の石、アメジストね。すてきだわ、古泉くん」 さっき宝石なんてただの石だとか言ってなかったか。 「なに言ってるの、こういうのは気持ちなのよ。この石には愛がこもってるの」 その言い方、俺のダイヤにはなにも詰まってないみたいじゃないか。などと鬱っぽく突っ込んでる場合ではない。俺はダイヤの指輪が入ったジュエリーケースを握り締めた。今日、これを長門の薬指にはめてやる。カナヅチで叩き込んででもはめてやる。 「さあっ、もたもたしてないで戦場へ行くわよ」 ハルヒの号令一過、ジュエリーショップを飛び出して今にも駐車違反の切符を切られそうな古泉の車に乗った。 長門のマンションの前で車が止まった。 「あたしたちは駐車場で待ってるわね。すぐ結果を知りたいから」 「分かった。とりあえず行ってくる」 「何度も言うと重みがなくなりそうですが、今度こそ幸運を」 「おう、ありがとよ」 窓から伸びた古泉の手のひらをパシリと叩いた。 入り口の前で七〇八を押してみるが、やっぱり出ない。まだ帰ってないのか。俺は四桁の解除キーを押して中に入った。 ドアの前に昨日残して帰った花束がまだ置かれたままだった。あれからまだ帰ってきてないらしい。もし帰ってるならこんなところに花を放置したりするはずがない。せっかく鶴屋さんパワーが注入された花も一日放置されたとあってはつらかったようで少し萎びていた。 俺はハルヒに電話をかけた。 「いないようだからここで待ってみる。お前たち帰ってていいぞ」 『分かったわ。あとでちゃんと連絡するのよ』 「おう。振られてもここから飛び降りる前には電話を入れる」 『なに縁起でもないこと言ってんのバカ!』 怒鳴られて耳がキンキンしたが、俺にも寒い冗談を言えるだけの余裕が出てきたってことだ。これもハルヒパワーの恩恵か。 ドアの前でじっと待ってると管理人室に通報されそうなので、長門から借りていた合鍵で部屋に入った。当然ながら電気はついておらず、換気されていない空気が淀んでいた。 長門のいない長門空間。問題が起こるたびに、ここに来ればなんとかなった安心の場所。元々静かな部屋だが主が居ない今は静かというより無音だった。ここには長門の無言もない。ページをめくる音もない。静かな吐息もない。俺を見つめる瞳の瞬きすらない。時間すらも止まっているように感じた。 俺は部屋の電灯を付け、手に持っていた花束の重さを思い出してキッチンへ行った。リボンと包みを解き、全体に水をまぶした。空いてる花瓶がないのでパスタ入れを洗って花瓶代わりにした。萎れた花には水に砂糖を入れるといいと誰かが言っていたのを思い出し、調味料入れの砂糖を少しだけ水に落とした。 バラを挿し真中に背の高い花を立ててまわりにカスミ草を挿した。俺が花を活けるなんて今までにあっただろうかね? 俺は喜緑さんに電話をかけた。 「どうも、キョンです」 『お疲れさま、長門さんはまだこっちにいるんです』 「伝えてもらっていいですか、帰ってくるまで長門の部屋で待っている、と」 喜緑さんは少し考え、『分かりましたわ』と言った。『でも、無理しないでくださいね』とも言った。 俺は蛍光灯が寒々しく部屋を照らす下でテーブルの前にぽつりと座り、じっと待ち続けた。ポケットからジュエリーケースを取り出して、ため息をついては開け、中身を見て閉じ、またポケットにしまうということを何度か繰り返した。 時計の針が八時を回った。長門はなかなか帰ってこない。もしかしたら今日も喜緑さんの部屋に泊まるつもりなのかな。俺はまたポケットからジュエリーケースを取り出そうとして、これが何度目かを数えてやめた。こんなことならもっと前に、大学時代にでもあいつと結婚しとくんだった。ガラじゃないが駆け落ちの末に学生結婚でもすればよかったんだ。長門と付き合いだしてからまさかこういう未来が俺の行く先にあるんだとは微塵も考えていなかった。 今日だけで数年分のため息をついたかもしれないが、またため息をつき、テーブルに突っ伏した。 「疲れた……」 そう呟いた。 長門は公園にいた。 なにを探すでもなく、なにを見るでもなく、ただじっと立ち尽くしていた。 両手のひらを、なにかをすくい上げるように、ゆっくりと上に向けた。 やがて静かに、まわりに、白い綿の切片が舞い降りた。 小さな手のひらの上で、舞い降りては消えるそれをじっと見ていた。 消えたそれは小さな水の玉になり、降りてくるのと同じ静けさで滴り落ちた。 顔を上げ、こっちに向かってゆるやかに手を振った。 長門の唇が、五文字の言葉を呟いた。 そして長門はゆっくりと消えた。 物音で目が覚めた。ドアを開ける音だ。誰かが靴を脱いで入ってくる音がした。 「……」 立ったまま、じっとこっちを見ていた。 「な、長門。おかえり」 「……ただいま」 返事だけはしてくれた。こないだ俺をひっぱたいたときのような、なにかを言わんとする真剣な表情は消えていた。少し落ち着いたようだ。 「あ、あのときはすまん。俺は完全に動転していた」 「……」 長門は何も言わなかった。俺がパスタ入れに活けた花をチラリと見た。 「中河に嫉妬していたんだと思う」 言い訳にしては聞こえがいいが、ほんとはそれだけじゃない。 長門は、少しだけ首をかしげて俺を見た。 「……なぜ、泣いてるの」 「え?」 俺は頬の皮膚がやたら突っ張るのに気が付いた。泣いてたのか俺。 「ああ、さっきうたた寝していた。お前の夢を見た」 「……」 俺は顔を洗いにシンクに行こうかと思ったが改めて座りなおした。言うべきことを言うまではここを動かないぞ。 長門はキッチンに行った。お茶を入れる音が聞こえてきた。俺はネクタイを整えフローリングに正座した。背筋を伸ばしてごくりと唾を飲み込んだ。口の中がカラカラに乾いている。 長門が現れた。まっすぐにその瞳を見据えて……、そのはずが、視線が揺れてどこを見ているのか自分でも分からなくなった。 「な、長門、俺と結婚してくれないか」 長門は一瞬、湯飲みを載せたお盆を落としそうになった。 「……結婚」 その言葉を噛んで含めるように発音した。その意味を探っているようだった。 「婚姻関係、一対一の男性と女性による法的な関係。財産、生殖、子供の親権などを共有する。通常、生涯連れ添うとされる」 「そうだな。当たってる」 「……」 「ここ数日お前との距離が開いて、やっと分かったんだ。お前と一緒にいたい。この先もずっとな」 ── 長門、お前とは長い付き合いだ。ハルヒのドタバタのフォローに駆けずり回ったり、とち狂った急進派に命を狙われたり、未来に行ったり過去に行ったり、時間にすりゃ何万年か何億年か分からないがそりゃもういろんなことがあったさ。なにかあるたびにお前に助けられてきた俺だが、お前は愚痴ひとつ言わず、なんの見返りも求めなかった。そんなお前のために俺ができるのは、いっしょにいてやれることくらいしかない。あと五十年か六十年かは分からないが、こんなドタバタが続いてもいい、残りの人生をお前と過ごしたい。毎朝目が覚めて、最初に見たいのはお前の顔だ。 俺はポケットからジュエリーケースを取り出し、長門の目の前でフタを開いた。 「受け取ってくれるか」 「……ダイヤモンド。炭素の純結晶体。地球上の物質でもっとも固いとされる。これは……かなり高価」 いつになく饒舌だな。化学の授業はいいから。 「……分かった。承諾する」長門はうなずいた。 そ、それだけでいいのか?もっとこう、“ほんとにあたしでいいのっ?”、“ああ、世界中どこを探してもお前しかいないさっ”とかいう感動的なセリフはないのか。せめて目を潤ませて笑顔のままキラキラと輝いてみせるとか、いや、俺はメロドラマの見すぎだな。 「よかった。断られたらどうしようかと思った」 「……わたしの答えは、ひとつしかない」」 俺は一気に緊張が崩れ、脱力系のため息と笑いに誘われた。 長門らしいといえば長門らしい返事だが、濃厚な感慨にふけりたいところなのにあっさり味過ぎてレッドペッパーとかレモン果汁を振り掛けたくなるようなプロポーズだった。しかしまあ、女の子の気持ちに鈍い俺とあまり感情を露にしない奥ゆかしい長門にすれば、これがこの二人に似合った運命の瞬間なのだろうね。 長門は指輪をつまんで眺めていた。俺はそれを左の薬指にはめてやる。細い指の上で透明の石が八方に光を放った。 「……これの意味は、なに」 「これはだな、自分には近々婚姻届を出す予定の人がいる、という意味だと思う」 「……把握した」 長門は何を思ったか、ごそごそとノートパソコンを取り出してACアダプタを繋いだ。 「なにをするんだ?」 気が早いが結婚式場でも調べるのか。 「……住基ネットに侵入する。あなたとわたしの戸籍データベースを改竄する」 「ま、待て待て」俺は笑いながら制した。「そういうことじゃなくてだな、もっとちゃんとした手順でやりたいんだ」 「……わたしには、まだ戸籍がない」 「そうだったのか」 考えてみれば、長門には出生届も国民健康保険もないだろう。長いこと一般市民として暮らしているヒューマノイドなのに、その人口にカウントされていないなんて意外だった。 長門はいつものように真っ暗なコマンドプロンプトを開き、呪文のようにやたら長いコマンドをパタパタと入力していた。カーソルがぴこぴこ点滅していたかと思うと、あっという間に大量の数字と記号の羅列が流れ始めた。 「……侵入コードを解析。暗号化ロジック解析、完了。……住民基本台帳データベースにアクセスした」 長門の指はかつてコンピ研と一戦を交えたときより高速に往復していた。長門の手にかかれば住基ネットのハッキングなんてちょろいもんだな。 「……わたしの戸籍謄本を偽造し、あなたとの婚姻関係を記録する。さらにあなたの戸籍謄本、住民票にも手を加える」 そこで指が止まった。俺をじっと見つめる黒い瞳。俺の脳内では曲名すらよく分からない交響曲が大音響で鳴り響いていた。 「……許可を」 その表情を見て俺はハッとした。長門がはじめてみせる満面の笑顔。俺には光輝いて見えた。もしかしたらこれが、長門、これがお前の待っていた奇蹟なのか。 「よし、やっちまえ」 「……そ」 賽は投げられた。二人はいまここに、正式に結婚した。 ほんとは二人で婚姻届を出したかったんだが、まあこういうのも長門流か。 『なにやってたのよアホキョン!携帯の前でずっと待ってたのにぃ』 十一時を回ってハルヒから電話がかかってきた。 「すまんすまん。つい甘いムードになっちまって。長門にかわるよ」 『有希、元気?鈍いバカキョンのせいで辛かったでしょう?』 「……彼と結婚する」 『ほんとにキョンでいいの?なんならもっといい男紹介するわよ』 やっと丸く収まりそうなのになんてこと言い出すんだ。長門は俺を見て、ひとことだけ言った。 「……彼がいい」 『妬けるわ。まあ、あんたが選んだのなら、相手が誰であろうと応援するから』 「……ありがとう」 『ただし、もし飽きたら代わりはいくらでもいるんだからね』 「……分かった」 おいおい、ほんとに分かったのか。俺の代わりっていったい誰がいるんだ。 「ということなんで、古泉にもよろしく伝えといてくれ」 『スピーカーモードで聞いてるわよ』 古泉の、ご婚約おめでとうございますという声が聞こえた。 電話を切って、俺はしばらく長門を抱いていた。イヤリングのことを思い出しケースから取り出して柔らかい耳たぶにつけてやった。襟元に光る点を落としてキラキラと小さく揺れている。長門は薬指の上に乗った石をじっと見つめていた。俺もそんな長門をじっと見つめていた。もう言葉なんていらない気がする。 「……ひとつ、教えて」 「なんだ?」 「……わたしと結婚しようと決めた、その動機」 「それは、なんというかだな、」 そこで口ごもった。俺はたいていの場合、誰かに背中をせっつかれるとかケツを蹴り上げられるとか、外圧でどうしても動かざるを得ないようになってはじめてコトを決める性質なのだが、長門にもそれが分かってるようで、俺がなぜ自発的に重大な決定をしたのか不思議に思ったのだろう。 「ややこしくてどう説明すればいいのか分からんのだが、」 俺はポケットから写真を取り出した。長門はそこに写っている中河と自分の姿を見て首をかしげた。 「……この写真を撮ったときの記憶がない」 「これはお前じゃない。信じられないかもしれんが、別世界のお前に会ったんだ」 「……異次元同位体?」 「そういうのとはちょっと違う気がするな。向こうのお前は中河と婚約しててな、なんというか、実に幸せそうだった」 ずっと俺を待っていたことは言えなかった。 「……そう。わたしには考えられない」 「俺もまあ気持ちは複雑だったけどな。あいつにはあいつの人生があって俺の出る幕なんかじゃない、俺には俺の長門がいるって思ったんだ」 「……」 「俺の長門を幸せにできるのは俺しかいない。そう思った」 「……そう。嬉しい」 「正直言うと、二人も中河に取られてたまるかって感じだったんだが」 ガラにもなくかっこつけて汗をかいている俺を見て、長門は微笑んだ。 急にまじめな顔になり、 「……わたしも、異世界のあなたを知っている」 「異世界の俺?どこにいるんだそいつ」 「……物理的な位置を示すことはできない」 「紙の表と裏の間だよな。どんなやつなんだ?」 「……あなたとほとんど変わらない」 「やっぱりお前といるのか」 「……わたしではない別の女性と一緒にいる」 「その女って誰だ?」 「……」 長門はなにも言わず、少しだけ寂しそうな表情をした。それはもしかしたらハルヒなのかもしれないし、俺の知らない別の誰かかもしれない。異世界の俺ってやつが俺と同じ性格を持っているんだとしても、人ってのはひとりで生きてるわけじゃない。誰と誰が出会うかはまったく予想できないわけで、たぶんそうやって歴史も世界も変わっていくのだろう。 メガネをかけた長門のことを思い出すと今でも寂しい気持ちは起こるが、あいつのおかげで俺自身がなにをするべきかを知ることができた。そのことを、向こうの長門には感謝するべきだろう。そうじゃないか? 喜緑さんのことを思い出して俺はふと疑問が浮かんだ。 「情報統合思念体はどう思ってるんだろうか」 「……これが涼宮ハルヒにどう影響を与えるかを検討している」 「お前自身の意思については?」 「……尊重するか、任務を優先させるか、それも検討している」 「相変わらず勝手なやつらだな」 「……しょうがない。彼らの意思は集合の総意」 「よく分からん。俺があいつらと直接話はできないのか」 「それは……難しい。あなたは概念での会話を理解できない」 「それもそうだな。いやまあ、ふつう結婚するときは相手の両親なり後見人なりに挨拶をするものなんだが」 「……わたしを通して伝えることは可能」 「じゃあ、長門と人生の時間を共有したい、と伝えてくれ」 「……分かった。伝える」 長門は部屋の宙をぼんやりと見つめる。 「……我々とは時間の概念が異なるが、あなた自身の自時間でいいか、と聞いている」 「それでいいさ」 「あなたが年老いて寿命を全うしたとしても、長門有希の存在は永世残るがそれでもいいか」 「そうなのか……」 考えてもみなかった。長門は俺が生まれる前から情報統合思念体にいる。俺が死んでからもたぶん存在し続ける。情報生命体から見た有機生命体の寿命は、たぶんカゲロウくらいのもんだろう。 俺はまじまじと長門を見た。 「長門は俺が死んだらどうするんだ?俺は人間だ。いつ事故が起こらないともかぎらん」 「あなたが自時間を終えても、わたしは残る」 「そうだよな。旦那が先に死んで未亡人になるようなものだな」 「……あなたが死んでも、わたしの中に残る」 「そうか。じゃあ質問への答えはこうだ、それでいい」 長門は俺の首に腕を回して抱きついた。 「……伝えた」その声はどことなく頼りなかった。 俺も長門も、二人の存在があまりに違いすぎることに、いまさらながらに気が付いたようだった。 翌朝、俺はハルヒのニヤニヤに遭遇しないうちに古泉を捕まえて男子トイレに引っ張っていった。 「古泉、ちょっと相談があってな」 「なんなりと」 「昨日、長門と入籍した」 「婚約の間違いですか?」 「いや、入籍だ」 「まじっすか、失礼。それはまた電撃的ですね」 「大声じゃいえないんだが、住基ネットに入り込んで戸籍を書き換えた」 「なんということ、それは重大な発言ですよ。こともあろうにシステム構築会社のスタッフが官庁のシステムにハッキングだなんて」 「実は長門には正式な戸籍がなくてな。ついでだっていうんで婚姻情報も書き込んでしまった」 「そうだったんですか。長門さんらしいですね。まあ知られなければ構わないでしょう。わが国のセキュリティ事情なんてその程度のもんです」 「さっきと言ってることが違うような気もするが、今のは聞かなかったことにしてくれ」 「分かりました。それで、相談というのは?」 「入籍したはいいが、まだ親に婚約すら話してなくてな。可及的急ぎで結婚式をやらねばならん」 「それは順序が逆というか、また急な話ですね。まあ、なんとかならないこともないでしょうが」 「それで、長門の後見人というか、親族代表を誰かに頼めないだろうか」 「ああ、それならお安い御用です。うちの機関にも長門さんのファンがおりましてね」 「そうだったのか」 「年齢的にも新川あたりがよろしいかと。彼も長門さんの大ファンです」 うーむ。闇の組織に長門の隠れファンがいたなんて、ちょっと不安だ。 「そうだな。新川さんに頼もう」 「承知しました。打診しておきます」 「それからな、これは無理なら断ってもいいんだが」 「水臭いですよ。なんでも言ってください」 「式場がな、図書館がいいと思うんだ」 「中央図書館ですか。面白い試みですね」 「休館日に場所を借りれないかと思ってはいるんだが、どうだろう」 「ほかでもないあなたと長門さんの頼みです。なんとかしますよ」 「無理言ってすまんな」 「こういうことにかけては、うちの機関はお安い御用です」 なんだかSOS団御用達の便利屋稼業をやらせてしまってるような気もするが、スマン幹部、そのうち埋め合わせはする。 「それにしても、あなたがよもや長門さんと結婚されることになるとは。正直驚きました」 「高三の頃から付き合ってたのは知ってるだろう」 「僕が言うのは、宇宙人製アンドロイドと婚姻関係を結ぶということがです」 「俺にとっちゃあいつの素性がなんだろうが関係ないんだ」 「さすがですね。ときに、長門さんのどこがよかったんですか」 「なんというかな。ハルヒはひとりででも勝手に暴走していられるだけのエネルギーがあるが、長門には、ひとりにしてはおけないと思わせるものがあるんだよな」 「長門さんには強力なバックボーンがあるじゃないですか」 「そりゃあ長門には何度も窮地を助けてもらった。だが、完璧を期しているはずのアンドロイドがだ、感情を処理できなくて暴走したり、人間的な自我に目覚めたり、誰かがフォローしてやらないといけない。お前はそうは思わないか?」 「なるほど。もしかしたら、それは彼女の計算の上でのことかもしれませんよ……」 そうなのか……。少し不安になってきた。 「冗談ですよ。彼女はあなたが好きなんです。それは僕にもずっと前から分かっていました」 「どれくらい前から?」 「例の、暴走したときでしょうか。あれはどう考えてもあなたへの熱いメッセージですよ」 やっぱりそうか。俺は少しだけ考え、思い直して言った。 「仮にあいつが計算の上でやったとしてもだな、俺は長門と一緒にいるほうが自分が必要とされていることを感じていられる」 「あなたが言うと実に真に迫ってますね。さすがです」 「お前のほうはどうなんだ?ハルヒとはうまくいってるのか。あれから浮いた話すら聞かないが」 「ええ、おかげさまで僕たちは幸せそのものですよ」 ハルヒと古泉がくっついてからというもの、こいつらが単体でいるのを見たことがなかったな。今すぐにでも同棲しそうな勢いだが。 「僕はそうでもないんですが、どちらかというと涼宮さんのほうが事を急ぎがちといいますか」 「まさか親に引き合わされたんじゃないだろうな」 「実はそのとおりでして」 ハルヒは古泉を連れて親類縁者全員に会わせてまわったらしい。たいていの場合、付き合っている相手を親兄弟に紹介するのはそろそろ結婚してもいいかなという打診も含めてそうするもんなんだが、あの告白の日から舌の根も乾かないうちにハルヒの家に連れて行かれ両親とご対面させられたというのだから、ハルヒという生き物の特性を熟知している古泉でなければとても耐えられんだろう。スーツを着てハルヒの実家に乗り込んでいく古泉に向かって、魔よけの札を貼ってやるとか合掌くらいはしてやればよかったなと思う俺だった。 「ご苦労だったな、緊張したろう」 「いえいえ、それなりに楽しいイベントでした」 こいつの、人生でどんな局面でもスマイルを通せる余裕はいったいどこから来るのか。 「あいつの両親ってどんな人なんだ?」 「いたって真面目なお父様、物静かで温厚なお母様でいらっしゃいますよ。良妻賢母というのはあのような方をいうのですね」 「親父さんのほうが厳しいタイプか。お前を見る目も厳しかったろ」 「いえいえ。ご存知ないかと思いますが、お父様とは以前から知り合いでして」 「なに、機関のコネか」 「ええまあ。あまり大きな声では言えませんが、涼宮さんが手をつけられない状態になったときの保険の意味で、機関では涼宮さんの身内にツテを作っておいたのですよ」 な、なんと用意周到なのだ。 「ときどき野球の試合を見に行ったりしています」 「なんとまあ。元々の知り合いかよ。それなら安心して娘を任せられるってもんだな」 「僕もこういう展開になるとは思ってもみませんでしたが。先方は僕が涼宮さんの会社の取締役になったことを知って、婿候補の期待のようなものはあったらしいですが」 なるほど。向こうは向こうで前から品定めしてたわけか。まあなんにせよ、ハルヒの父親が味方についてくれているのは心強いことだ。外堀から埋めていくとは俺よりずっとハルヒの扱いがうまい気がするぜ。 長門テクノロジーによって唐突に入籍したのはいいのだが、うちの親は露も知らないでいる。二人ともときどきハルヒと遊びに来ていた長門とは遭遇しているはずで、付き合ってることも妹を通じて知ってるはずだった。盆休みに叔母から早く嫁さんを見つけろと言われたばかりなのだが、できるだけ早く今週中にも婚約を周知させなければいけない。いくらなんでも急すぎんだろと自分に突っ込みを入れたいくらいなのだが、すでに入籍という既成事実が発効してしまったので笑うどころではなくなってしまった。 「おやじとおふくろ、ちょっと相談があるんだけど」 「なによキョン、改まって」 「……なんだ」 最初にしておそらく今回きりの出演だが、うちの親である。息子が改まって話をしようとしているにもかかわらずテレビのバラエティ番組なんかに釘付けになっている二人だった。 「ええと実は、唐突だが来月結婚することにした」 あんぐりと口を開けた二つの頭がくるりとこちらを向いた。結納とかもう古臭い習慣はいいからと言おうとしたのだが、息子の結婚します宣言があまりに唐突過ぎたらしく、おやじは呆然としおふくろは泣いて怒った。 「あんたいきなりなに言い出すのよ、心の準備ってもんがあるでしょ!」 この口調、知ってる誰かにすごく似てるな。ネクタイを引っ張られてクビを絞められそうな勢いだ。 「ごめん。ちょっとこみいった事情があってな」 「まさか出来ちゃった婚とかいうんじゃないでしょうね」 違う、断じてそれは違う。長門とはそういうハプニングには至っていない。 「指輪を買うのに金が足りないんだけど少し貸してもらえないかな」 「結婚指輪くらい買ってあげるわよ。この日のために貯金くらいしてあるわ」 いや、自分の結婚のために親のスネかじるのはどうかと思うんだが。まあいつか何かの形で返すことにするか。 「それで、ご両親にはご挨拶に行ったの?」 「いやまだだけど」 「まだって、なに考えてるのあんたは。ちょっとキョンそこに座んなさい」 「さっきから座ってるけど」 「苦労して育てた娘を他所にやるのにまだ挨拶もないなんて、あんた常識でモノを考えなさいよね」 それから一時間ばかし説教された挙句、ともかく先方のご両親と会う席を用意しろと約束させられた。 長門の両親か、困ったな。まさか情報統合思念体を呼び出すわけにもいかんしな。なぜか羽の生えた朝比奈さんの姿が浮かんだが。 「キョンくん、結婚するにも手順ってもんがあるでしょ。まあ相手が有希ちゃんだっていうから驚かないけどね」 妹にまで言われちゃ俺もヤキが回ったな。 「……」 親父はまだ呆然から開放されなくて最後まで黙っていた。その無言、誰かに似てる気がするんだが。 一度長門を晩飯に呼べということになり連れてくることにした。 「長門、結婚指輪を買いに行きたいんだが、いっしょに行くか?」 「……うん」 「その帰りにうちでメシを食いに寄ってもらっていいか。うちの親が会いたいそうだ」 「……分かった」 「ドタバタしててすまんな。ほんとはもっとゆっくり進めたかったんだが」 世間では婚約から結婚式、新居への引越しまでは一年くらいかけるものらしい。俺が言うのもなんだが、気の長い話だな。 「……いい。あなたらしい、やり方」 長門もだんだん俺という生き物が分かってきたようだな。 その週の終わりに、長門を助手席に乗せて古泉の知り合いのジュエリーショップに行った。注文して当日中に婚約指輪を調達するなんて無茶なことをやってのけた店なのだが、そんな芸当が出来るのは機関直営の宝石店だからかもしれんな。もしかしたら多丸さんが直々に経営する店とか。 店に入ると店員が俺の目を見て軽く会釈をした。さすがに顔を覚えられていたようだ。隣にいる長門を見て、この娘さんだったんですね、という感じでニコっとうなずいた。 「あの……今日は結婚指輪を見に、」 堂々と言うのが恥ずかしくて耳元で囁くように言うと、黙ってマリッジリングのショーケースを教えてくれた。ご婚約おめでとうございます!とか大声で叫ばれると覚悟していたのだが俺の誇大妄想だったようで、店員は遠くからそっと二人を見ていて静かに品定めさせてくれた。 白い柔らかな光の下にいろんなデザインのリングが並んでいた。緩くカーブして上から見るとハートになっているやつや、小さなダイヤがリングに沿ってずらりと埋め込まれたやつ、リングの縁に細かい溝が刻まれたやつ、それからエンゲージリングと同じデザインをしていて重ねてはめるやつ。どれもプラチナだが金属なのに温かい感じがする。 「長門、どれがいい?」 いくつかケースから出してもらい試してみていたが、ひとつを手に取った。シンプルな平たいリングに小さなハート型のダイヤがちょこんと埋め込まれたデザインだった。もちろんダイヤがはまっているのはレディスのほうだが。 「いいなこれ」 サイズは九号ではないので少し緩いが長門の細い指にはめてやるといい感じに映えていた。手を握ったり開いたりしながらリングを眺める長門の顔が下からの淡い光に照らされていて、なんとなく花嫁らしい感じがする。 「……これにする」 「すいません、これペアでお願いします」 俺は自分の指輪のサイズなんか知らないので店員に測ってもらった。 「長門、リングの裏に文字を入れてくれるらしいんだがなにを入れてもらおうか」 長門は少し考えてメモ用紙を取り、ボールペンで線画のようなものを走り書きした。ラテン語じゃなさそうだが、あれれ、それってハルヒが校庭に落書きした宇宙文字に似てないか。 店員はメモ用紙を上にしたり横にしたりして、いったいどこの国の文字だろうかとしきりに考え込んでいたのだが、長門がそのままの図案で入れてくれと言ったので注文書の欄にペタと貼り付けていた。文字を上下に分割し、リングを二つ重ねたときに文字が読めるようになっている。気の効いたデザインだ。 前金で払って引き換え証をもらって店を出た。車の中で長門に尋ねた。 「あの文字はどういう意味なんだ?」 「……あの記号にはさまざまな情報が内包されている」 「簡単に言うと?」 「……大まかな意訳をすると、絆」 宇宙文字でいう絆か。なるほど、長門らしい。 自宅のドアを開けて待ち焦がれている俺ファミリーに来客を告げた。なんつーか、あらかじめ彼女として紹介しておけばこんな緊張することもなかったのだろうが、この歳になって初めて女の子を親に紹介するというイベントで妙に照れくさいというか、すでに知られているのに改めて顔合わせをするのが気恥ずかしいというか、俺もヘンなところでシャイなやつだな。 「おーい、帰ったぞ。長門を連れてきたぞ」 「キョンくんおっかえり~、待ってたよ有希ちゃん」 妹が口にアイスをくわえたまま出てきた。いつもは俺が帰ってもにゃあとも言わないシャミセンも、なぜか今日だけは玄関に出迎えていた。こいつも長門のファンだからな。 「長門さん、我が家へようこそ。キョンの母です」 「……ようこそ。父」 居間には、俺の血を分けた、じゃなくて血を分けてもらった二親がまるで雛人形のお雛様お内裏様のようにちょこんと座っている。なにかしこまって正座なんかしてんだ。長門もそれに合わせたのか二人の前に座って三つ指を突き、丁寧に頭を下げて口上を述べた。 「……長門有希。お見知りおきを」 「こ、こたびは当家の息子がお世話に、」 お世話にあいなりそうろう、とか言い出しそうなので俺が割って入った。 「おいおい三人とも、時代劇じゃないんだからもっと軽くやってくれ。ほら親父、ビールだビール」 「あいわかった」 カクンとうなずいて冷蔵庫に向かっている。妙に緊張していてどっちが客なのかわからん。 テーブルで長門が親父にビールを注ぎ、親父が長門にビールを注ぐという奇妙なループを見ながら焼肉を食った。こんな日だ、妹がこっそり飲んでいたのはまあ大目に見てやろう。食いながら長門と話をしていたのはほとんどおふくろで、おやじはたまに会社経営のことを聞いていた。 妹が突然、 「有希ちゃん、どうしてキョンくんに惚れたの?」 などと身も蓋もない質問を浴びせて俺はビールを噴いた。こういう顔合わせではあんまり突っ込んだ恋話はしないもんなんだが。 「……時間軸における因果関係の結果そうなった。通俗的な用語を使用すれば、運命」 「そうなんだあ、赤い糸なんだ。キョンくん聞いた?運命の人だよお」 酔いがまわってるらしく妹は長門のノロケに感動してひとりでキャーキャー言っている。 「二人は付き合ってどれくらいなの?」今度はおふくろだった。 「……六年三ヵ月と十二日、五時間と八分」 「六年前っていうと、ええと、」 「付き合いだしたのは確か高校三年の五月だな」 もしかして長門、付き合っている時間を今もカウントし続けてるのか。あ、もうすぐ九分だ。 「そうなんだ。どういうきっかけだったの?」 「あ、それあたしも聞きたい聞きたい」 「なんつーか、あんときはハルヒが怒ってだなぁ、一時はどうなることかと」 って、それを説明させると夜中になっちまうぞ。 適当にかいつまんで話していると九時を回っていた。長門がそろそろおいとまするというと、おふくろがお約束のごとくに今日は泊まっていきなさいよと引きとめようとした。客布団もあるしそれはそれで悪くはないんだが、長門が猫にエサをやらなくてはならないと言うので俺は酔い覚ましがてら歩いて送っていくことにした。 帰りに玄関灯に背中を照らされながら親父が言った。 「……長門さん。うちの息子、親に似て出来が悪いがよろしくお願いする」 「……分かった。責任を持って承る」 なんだか引き取られてしまった仔猫みたいな気分だが。 五章へ
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※エンドレスエイトのネタバレ注意 八月の二週間を延々と繰り返し無限ループの次元に放り込まれたという衝撃の事実を知ってから後も、すぐ打開策が出るわけもなく、ハルヒの意志を尊重して今夜も天体観測という活動に参加するしかなかった。もっとも、長門だけはハルヒの監視役という任務を組織に忠義をつくす軍人のごとく遂行していた。 みくるは「望遠鏡」という古典的な言葉に魅了されつつ、しばしその鏡筒から月を眺める。 「個人が趣味で使うシンプルな構造の天体望遠鏡ですよ。現代の観測技術では、遠くの物体の電磁波を捕らえる方法が使われています」 アマチュア望遠鏡に興味津々であったみくるに古泉が付け加えた。 …私の時代ではどんなだったろう?昨夜、未来との交信を何度も試みたが無駄に終わったことが思い出され、また少し沈んだ気持ちになった。その表情を読んだ古泉が「すみません」と苦笑する。 「UFOと交信できる人っていたじゃない?手をつないで念じるの、あれってマネ出来ないかしら」 「やめろ、頼むから」 そんなハルヒとキョンのやり取りを聞きつつ、みくるは少し距離の置いたところで腰を下ろした。視線をどこか遠くに向けていた長門が、座り込んだ自分に目を向けたが気疲れを起こしている今はあまり気にならないことだった。 「朝比奈さん、起きてください」というキョンの声で目が覚める。 そこにあった望遠鏡は片付けられ変わりに重そうなケースと三脚をもった古泉がいた。少し眠ったおかげで頭はすっきりしていた。 「今夜はお開きにしましょう」 「じゃ明日は…。そうねぇ、信憑性の高い心霊スポットをネットで検索して夕方から探索に行くわ!」 明日の志向を高らかに宣言するハルヒを囲み、ぞろぞろと一階に降りるエレベータに乗り込んだ。そのあいだハルヒの会話が途切れることはない。玄関に出ようとするところ、一番後ろを歩いていた長門は不意にみくるを呼び止めるように右腕を静かにつかんだ。 「これ…」 小さく折りたたまれた紙だった。 「あとで読んで」 そろそろと手を出すとその上に紙が置かれた。 明るいランプ色の玄関から長門が無言でメンバーを見送る中で解散となった。しばらく四人で帰路に着き、みくるは他のメンバーと別れるとさっき長門から手渡された紙を広げる。 ____今夜、自室にて待つ。 みくるは他の三人に見つからないように長門のマンションへ引き返す道をたどった。正直一人で長門に会うのは心もとないことだったが、メモでこっそり渡すぐらいであるから内密にして欲しいのだろう。 玄関に備え付けられた共同のインターホンの前に立つ。部屋番号、そして呼出を押す。オートロックが解除される。エレベータで昇ると、目的の部屋へ足を進めた。長門と書かれた表札に目をやり、ドアをノックする。その場で待っていたかのようにすんなりドアが開かれた。 「あ、あの」 「入って」 長門はドアを閉めるとリビングへ進む。みくるは靴を脱ぐのに手間取り、長門の背中を見ながらおずおずと後に続いた。 「長門さん、私に何か…」 「涼宮ハルヒが作り出した長い時間のこと」 長門は相変わらず直立で、みくるに背を向けていたが構わず話を続けた。 「時間の流れは定日時から再び戻され、類似した別の時を刻む。ゆえに以降の未来が来ない状態に陥っている」 「あ、はい。そうです」 「私はあなたと接触する機会を涼宮ハルヒに関連した事項でなければ持つことができない」 「それは、……私もそうだと思います」 「でも今のあなたには元の未来が存在しない。私は朝比奈みくるという一個人に関心を持っている。未来を失った朝比奈みくるはこの世界で孤立している。あなたの元の時代の何者とも接点を持たないのならば、現在所持している目的から反れた行動を起こしても誰からも咎められることはない。私は今のこの状況下であなたと接触をすることが可能と考えている」 長門はそこまで言うと振り向いた。黒い瞳をみくるへと向ける。 「…わ、私の世界の情報が欲しいのですか?」 「違う、あなたは勘違いしている。前もこの部屋で私はあなたに同じ事を言った。しかし、あなたは私を拒絶した」 「前回もですか…?だって、今の話はそのように聞こえます」 「交渉を要請しているが情報が目的ではない……私の伝え方が悪い…」 みくるは長門の言葉を待った。前の世界で長門さんは私への説得が失敗している…ならば今回はどうすればいいか悩んでいるように思えた。長く重い沈黙のあと、長門が口を開いた。 「私はあなたに関心をもっている………それは、私はあなたが好きだということ」 「……」 好きというのは好意?長門の思わぬ告白。みくるは「信じられない」という顔をした。 「そ、そんな…、私は」 戸惑うみくるの手に触れ、軽く握る。アンドロイドとは思えない人肌の感触と温もりが伝わった。 「あなたを愛している。……これら以外に該当する言葉がない」 長門の目が伏せられた。手は握られたままだ。みくるはそんな長門の仕草に、情報統合思念体というものではなく自分の発言した言葉に恥じらいを感じ、次にどうしたらいいか分からないという一人の少女のように感じた。 清楚な顔をした小柄な少女。今このときはタイムトラベラー、ヒューマノイドというSF的な肩書きは他所へ追いやり、自分はこの時代の女子生徒、長門さんは真面目で読書好きな下級生…、そんな設定でもいいと思う。 「これは私の一方的な願い。私はあなたに強要しない…あなたの意思に委ねるものである」 握られた手から、長門の指がわずかにピクリと動いたことが分かった。 (緊張しているのかな?)と考えたみくるは、ふふふっと笑い出す。長門はその声に顔を上げた。 「ごめんなさい。でも『何々である』…とか、ロボットみたいです」 みくるは握られた手を握り返した。 「では、あなた次第、好きにしていい…」 「好きにしていい、なんて言ったら私は長門さんに何をしてもいいことになりますよ?」 「……」 「あの、抱きしめてもいいですか?」 「…いい」 みくるは長門の肩口へ腕を伸ばすと、両手で自分の身体に引き寄せる。長門は顔にみくるの胸の感触と背中に回された両腕を感じた。長門はそろそろと両腕をみくるの背中に腕を回す。しばらくすると、どちらかともなく床に座り込み、お互いの身体が離れた。 みくるは長門に唇を塞がれる。みくるは少し乾いた唇の感触を感じつつ、彼女に押し倒されるようにして背中が床に付いた。互いの吐息が感じられるほどの近い距離。 「たぶん数日後にはまた二週間前に戻り、このことは私の記憶から無かったことになります」 「…」 「長門さんの中に私の記憶を残して」 「そう」 「それってズルイ気がします」 「あなたにとっては、その方がいい」 長門さんが私の鎖骨に口付けた。スカートのホックが手際よく外される。 (それじゃ、長門さんの告白は無駄に終わってしまう…) 衣擦れの音が響く部屋の中で、みくるは思う。それなら、長門さんの脳裏から私を忘れることができないように今この時を二人で過ごす。それがこのような行為であっても。それに…あと数日残っている。もしかしたら私の記憶にも残るかもしれない、長門有希という少女らしい一面を見せたヒューマノイドを。何より今回でこのループが終わるならば、私は彼女を忘れることはない。 その時、私の未来はどう変えられるだろう。 長門さんは私の首筋へ舌を這わせる。私は短い吐息とともに彼女の頭部を掻き抱いた。 end
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あいつはあんな風に言ってくれたけど、あたしに勇気なんて無いと思う。今でも変わる事が怖い。 簡単に言えばあたしが振られて、その瞬間からあたしとあいつの関係が今までと変わってしまう事を、あたしは何より 恐れているんだと思う。 そりゃあ、あたしとあいつがうまくいって恋人同士なんて関係になれれば、こんなにいい事はない。 だけどあいつを好きなのはあたしだけじゃない、有希は多分あたしよりあいつの事が好き。 ほんとなら、誰よりもあいつが好きあたしが一番よとか言いたい所だけど、あの子のまっすぐな想いはあたしにもわかる。 有希とあいつが恋人関係になったなら、あたしは祝福する事ができるのかしら……きっと、出来ないと思う。 どうしよう、もう頭の中ぐちゃぐちゃだ。もしあいつと有希が連れ立ってあたしの所に来て、報告なんかされたらその場で 泣いちゃうかもしれない、おめでとうも言わずにただ泣き続けるだけ、そんな気がする。 あたしがそんな事を考えながら歩いていると、いつのまにか部室の前にたどり着いていた。 この時間なら有希だけね、有希だけの時はそっとドアを開ける事にしている。が、鍵が掛かっている。 しかし中からは人の気配がする、それも複数。耳を澄ますと僅かに漏れる声も聞こえる。有希と……キョンだ。 あいつは有希を選んだのかな。震える手を無理矢理ドアノブから離すと、あたしは軽くよろめいて廊下の窓際に寄りかかる。 あたしはあいつに待っているとは言ったけど、あいつがあたしの所に来るって保証は無いんだもんね。 目からこぼれる雫を拭う事も忘れて、あたしは足早に部室を後にした。 あたしの電話にあいつからの着信があったのは、それからすぐの事だった。 「今日の7時、駅前公園で待っている。」 部室を飛び出した俺は、ハルヒにそれを伝えて返事も待たずに電話を切った。 それからしばらく経ち、早々に公園で待機開始。今は午後5時50分、指定時間まで1時間以上ある。 これから俺はハルヒに自分の気持ちを伝える。その事を考えるだけで緊張が高まる、その度に長門の事を思い出す。 あいつは俺の気持ちを聞いた上で、自分の恋心を俺に告げた。 俺に受け入れてもらえないと知っていてだ。俺は長門のまっすぐな気持ちを見習いたい。 ハルヒへの告白がどんな結果になろうとも、俺は後悔しない。俺を応援してくれる長門の為にもだ。 だけど…俺、さっきからおんなじ事考えて、頭の中ぐるぐる回ってるんだよなぁ。 確かに覚悟は決めてるんだが、それはそれとしてやっぱりドキドキする。 よくよく考えれば女性に告白なんて初めての事だ、俺に上手く出来んのかな。いかんいかん、これももう3回目だ。 携帯の時間表示は、6時05分。まだまだ時間はある、長いな。電話してからすぐの時間にすれば良かったか。 まあ、あまり深く考えず『遅刻、罰金』なんて事にならない様に時間を指定したわけだし、仕方ないか。 だいいち、恐らく俺にとってかなり重要なイベントになる、出だしから躓くなんてもってのほかだもんな。 ん、なんだか普段の俺らしく、どうでもいい事を考えられる様になってきたな。いい感じだぞ。 ふと、公園の外に目線をやると、遠目に見てもわかるハルヒの姿を見つけた。 随分早いな。いや、いつもの集合の時のあいつを考えたらこんな物なのか。 俺はベンチから立ち上がり自らの頬をバシッと叩く。長門、俺は頑張るぜ。 ハルヒは神妙な顔つきで、俺を睨むように視線を逸らさずゆっくりと近づいてくる。 俺の目の前にピタッと止まったハルヒは、なんとも言えんローテンションな声でこう言った。 「大事な用って何よ。忙しいのにわざわざ来てあげたんだから、さっさとしてよね」 「どこか喫茶店でも入るか?」 俺が問いかけるも、ハルヒはここでいいと答える。 とりあえずハルヒにベンチへ座るよう促し、近くの自販機で飲み物を買ってきてやった。 「ほれ、オレンジでいいか」 「100%じゃなきゃ返品するわよ」 心配せんでも100%オレンジだ。ほらよ。と、軽く投げてやると、ハルヒは目線を合わせずにキャッチする。器用なもんだな。 プルタブを開けコーヒーを一口飲む。今の俺の頭の中は、先程とは違ってえらくすっきりと晴れ渡っている。 本人を目の前にして肝が据わったのだろうか、俺は缶コーヒーをベンチに置きハルヒの方へ体を向けた。 「ハルヒ、こっち向いてくれるか」 ジュースも飲まず、手で缶をいじくり回していたハルヒは、俺の言葉に少し体を震わせてそろそろとこちらに顔を向ける。 「何よ」 しかし、なんでまたこんなに機嫌が悪いのか。俺、昼間に何かしたっけか? 俺は気を取り直して軽く咳払いをする。よし、いくぜ。ハルヒの肩に手をかけて目を見つめる。 「ハルヒ、俺はお前の事が好きだ」 思ったよりあっさり言えた、さすがに本人に伝える時は詰まるんじゃないかと思っていたんだがな。 対するハルヒはなんだか…青い顔をしてる? なんだ具合でも悪いのか。 「あんた、有希はどうしたのよ。今日部室であの子と話してたでしょ」 「あの時に部室に来てたのか」 全然気が付かなかったな。そういや邪魔が入ったらいかんと鍵を掛けてたんだっけか。 「…長門には、俺が誰の事を好きなのか伝えて、それからあいつの気持ちを聞いた。長門の気持ちは受け止める事は 出来たが受け入れる事は出来なかった」 「どうしてよ。有希はあんなにあんたの事が好きなのに」 「俺がお前の事を好きなんだから、これはもうどうしようもないだろう。長門の事を保留にして、お前に振られたら即長門を 好きになるなんて器用かつふざけた真似は俺には出来ん」 俺はベンチに置いたコーヒーを取り、苦い液体を一口流し込む。ハルヒは未開封のオレンジジュースをいじり続けている。 「これは、まあ、俺と長門の事だからあんまり詳しくは話せないが、長門は俺がハルヒの事を好きってわかっていて、俺を 好きだと言ってくれた。それはあいつにとっての何らかの区切りなんだと思う、長門は多分だが俺に告白した事で気持ちの 整理をつけたんだと俺は考えてる。まあ、全然見当違いって可能性もあるがな」 ハルヒは黙って聞いていたが、幾分低いトーンで話し始めた。 「あたしもね、あんたが言った様に怖かったのよ。今のままがいいって思ってたの。でもあの子は違ったわ、あたし聞いたのよ あんたの事好きかって。答えはあんたも知ってるわよね。だからあたし言っちゃったの勝負だって、あんたにアピールして あんたに決めてもらおうって……あたしってずるいわよね、そうでもしなきゃ有希はあんたに好きだって言っちゃう、あたしが 言えない好きをあんたに伝えてしまう。あたしが変わらないでいる間に有希とあんたが変わってしまう、それが怖かったのよ」 今度は俺が黙る番になった。普段のハルヒらしからぬネガティブな感情を聞いて、俺の思考が一瞬停止する。 「嫌な女よね、こんなあたしなんか好きになったっていい事無いわよね」 なんだか様子がおかしくなってきたな。おい、ハルヒ。と声を掛けようとした瞬間。 「やっぱりあんたには、あたしなんかより有希の方がお似合いだと思うの」 言うだけ言ってすっ飛んでっちまった。なんだよこれ、どんな結果でもかまわんとは思ったが、こんなのアリか。 納得できるわけがない、むしろ腹が立つ。長門の方がお似合いだと? 俺はそんな事が聞きたいんじゃない。 俺はくそったれとつぶやいて、夜の街へ消えたハルヒを追って走り出していた。 走り出したはいいのだが、ご存知の様にハルヒの運動能力は非常に高い。 既に米粒の様にしか見えなくなっているハルヒを追う俺は、情けない事に息も絶え絶えといった所である。 ちくしょう、別にバリバリ運動部って程でなくても、もうちょっと鍛えておけばよかったぜ。 なんて軽く後悔してみたが、恐らく明日には忘れてるんだろうな。 しかし、酸素が不足している脳は、今の俺の状況をあまりよろしくない物と警告を発している。 なにせまだ早いとはいえ夜であり、前方を駆け抜ける女性を汗だくでハアハア言いながら追いかける男なんぞ、通報対象に しか見えん。だが、かのカマキリも言う様に馬鹿馬鹿しいとは思うだろうが、やってる本人は大真面目なわけで、つまりあれだ、 知ってる奴に会わなけりゃいいなと思うわけだ。 通報される可能性は、いいかげんハルヒとの距離も離れすぎたし、多分大丈夫だろう。多分な。 とは言え、これ以上離されれば見失ってしまう。俺は自らのエンジンにニトロでも積んでいれば等と思いつつ、ひたすらに走り続ける。 おっ、大通りの交差点の信号が赤になる、ハルヒはストップせざるを得ない。ここが追い込み所と俺は加速した。 「ハルヒ、待てっ」 おいおい、信号変わるのが早すぎるんじゃないのか。俺の手は後一歩のところでハルヒの腕を掴み損ねて空を切った。 先程はハルヒの運動能力が高いと言ったが、それだけでなく心肺機能がずば抜けてると思われる。 俺はもうヨロヨロだが、ハルヒの方は僅かばかりのインターバルでもう復活している。 いやむしろ心拍数を上げずに、最適値でコントロールしているのかもしれん。 運動強度と心拍数がどうとか岡部が語っていたのを、何の前触れもなく思い出す。って、どうでもいいなそんな事は。 はいはいダッシュダッシュ、何としても捕まえてやるぜ、ハルヒ。 まあ、前置きとかはもうどうでもよくて、今俺は道路にぶっ倒れてる。 またまた差を詰めるチャンスがあったんだが、これまた、同じ様に逃げられたわけで、あげく勢い余ってすっ転んだ。 で、無様にひっくり返っているというわけだ。 もう諦めてこのまま寝ちまおうか、なんて頭をかすめるが今日の俺はちょっと違うと思いたい。 軽く痙攣する筋肉達、すまんがご主人様たる俺の為にもう少し踏ん張ってくれ。俺は拳で3度太ももを叩き、立ち上がる。 転んだ際に打ち付けたのだろうか、ひじの辺りがじんわりと痛む。俺はその痛みを振り切るように再度走り出した。 もう既にハルヒのハの字も見えない状態だ、だが俺は走りつづける。 もう家に帰っちまったんじゃないかとか、全然別の場所へ行っちまったんじゃないかとか、普通なら考えるんだろう。 だが俺は走り続けている、何の確証もないが間違いなくハルヒはこっちに居ると、俺の第六感だか第七感だかが告げている。 そんなのが俺にあるのかは知らんけどな。 そして俺はスタート地点に立つ、何のスタートだよと言われれば早朝ハイキングコースと俺は答えるだろう。 深く息を吸いゆっくりと吐き出す。よし、スタート。目指すは我が学び舎、北高校だ。 さて、とりあえず誰か俺を褒めてくれ。恐らくこのタイムでこの坂を駆け上がった奴がかつていただろうかと問われれば、誰もが いないと即答してくれるであろう。無論こんな記録になんら意味は無いし、誰かに話したとしてもバカだなの一言で終わるのだがな。 俺は既に閉め切られた校門をよじ登り、校内に侵入を果たした。行く場所はそんなには無い、せいぜい俺のクラスか部室なんだが 普通に考えれば中に進入するのは無理だ。何故なら、ここは閉鎖空間ではないのだからな。 俺は校舎を右手に見上げながら、グラウンドに下りるスロープを降りていく。校舎内が無理ならこちらだろう。 ビンゴ、ハルヒはグラウンドの真ん中で空を見上げていた。俺は逸る気持ちを抑えてゆっくりとハルヒに近づいた。 「よう、待たせたな」 あえて、そう言った。なんで逃げたとか詰め寄るのは、どうもまずい気がする。まあ、深く考えてるわけでなく、ただなんとなくなんだが。 「待ってなんかいないわよ。なんで来たのよ」 「そりゃあ、返事を聞いてないからだな。yesかnoかどちらかになると思ってたらどっちでもなかった、後悔はしないと決めてきたのに 後悔させるような返事をもらっちゃあ納得のしようもない。いやそもそもまともな返事ですらなかったか」 ハルヒはまだ俺に背を向けたまま、話し始めた。無論どんな表情なのかもこちらからはわからない。 「なんでよ、あたしみたいな嫌な女より、有希の方を選んだ方がいいって言ってんの。ただそれだけよ」 「そんな事言うならただ一言、あんたとは付き合えないって言ってくれりゃいいんだよ。じゃなけりゃ、あんたなんか嫌いだでもいいよ。 俺と長門の事はもう済んだ事だ、お前がどう言ってもどうにもならん」 ここまで言って、俺ははたと気付く。俺は何をやっているのかと。 これは俺の気持ちを押し付けて、ハルヒに答えを強要しているのではないか。 はあ……俺は俺の気持ちってやつばかり考えていて、肝心のハルヒの気持ちを全然考えていなかった。 今ハルヒが抱えている不安やらを無視している俺の行動は決して褒められた物じゃない。 なんてこった、俺はまだまだ子供なんだな、忌々しいほどに。 「…すまん、ハルヒ。俺はどうやら急ぎ過ぎたようだ。お前が抱えてる不安を解消せずに、俺の気持ちを押し付けていたと思う。 変わらない物は無いとは言ったが、だからといって急いで変わらなきゃいけないってわけでもない事を俺は考えていなかった。 お前の気持ちも俺の気持ちも、もっとゆっくり変わっていってもいいんじゃないかと思う。だから、俺にもう一度チャンスをくれないか」 ちょっとばかし問題の先送りって気はするんだが、今の俺らにはこれが最善な策だと俺は考えた。 はたしてハルヒはどう捉えてくれるのか……そして、どう答えてくれるのだろうか。 「うん、あたしからもお願いする。キョンにもっと近づけるようにあたしも頑張るから、あたしにもチャンスを頂戴」 ふう、なんとかお互い落し所を見つけられたようだ。 応援してくれた長門にはすまないとは思うが、もう少し俺たちの事を見守っていてくれよ。 「ありがとな、ハルヒ」 俺はハルヒの手を取り、手を繋いだまま学校を後にした。 2人で坂を下りながらお互い何も言わなかったが、繋いだ手の暖かさが俺を安心させてくれる。そんな気がしたんだ。 そんなこんなで、俺とハルヒ達の恋愛騒動はここで一応の決着となったわけだ。 だが翌日の放課後、俺とハルヒは揃って長門から説教されるという事態となった。 長門曰く「あなた達はヘタレ過ぎる」とか「この結末には失望した」とかだ。すいません長門さん。 長門の説教は1時間程続いたが、ハルヒは長門に抱きつきごめんなさいと涙を流し、俺は家に帰って反省しろと言われて部室を追い 出される事となる。 ハルヒ大丈夫かな、と思いドアを開けると長門からまかせてとの声が掛かった。 俺は静かにドアを閉めて1人寂しく坂道を下って家に帰る事にした。 それからの事はかいつまんで話す事にしよう。俺はハルヒにもっと近づくために志望の大学をハルヒと同じにした。 ハルヒもそれに協力してくれる事となり、俺に対する個人授業が部室での日課となる。 その結果俺とハルヒ、おまけに長門と古泉も一緒に某有名国立大学に合格できた。 谷口からは他はともかくお前は北高の奇跡だとか言われたが俺もそう思ったくらいなんだぜ。 これもハルヒとその仲間達のおかげなんだけどな。 で、大学入学後の初めての冬。俺とハルヒはようやくその距離を縮め、お互いの気持ちを確かめ合った。 そう、今までの仲間から恋人という関係になる事が出来たんだ。 なんでここの説明を省くのかと言うと、何と言うか、なるようになったとしか言えんからだ。 ここでも長門からは「さんざん引っ張ったのだから、もっとドラマチックかつロマンチックに告白すべき」とか「学生食堂で食事しながら 告白とかありえない」等、えらい勢いで非難された。すまん、長門。 そんなわけで恋人となった俺たちだが、それからもSOS団としての活動は続き、相変わらず不思議を探す毎日だったりもする。 俺たちの周りは随分変わったけど、これだけは変わらずに続いていけば良いなと俺とハルヒは笑いあった。 そして、俺たちの大学生活もいよいよ終わりを告げる。卒業式の日に俺はひとつの決意をもって式に挑んだ。 式も滞りなく終了し、卒業証書を手に俺とハルヒは周りに誰もいない俺達だけの秘密の場所に居た。 「ここに来るのも今日で最後ってことか、少しばかり寂しいな」 「そうね、結構思い出あるものね。お昼食べたり、喧嘩したり、仲直りしたり、喧嘩したり、ただお喋りして過ごしたり、喧嘩したり」 喧嘩の比率高くないか、それ以外にもたくさん思い出あるだろうよ。ま、それはさて置いてだな。 「ハルヒ、なんだかんだで卒業まで短かったよな。それだけ充実してたって事なのかもしれんけどさ」 「そうね、でもまだまだやりたい事はいっぱいあるのよ。これからも皆で一緒にもっともっと楽しく生きたいわ」 「なあ、ハルヒ。俺も同じ気持ちだよ、だけどお前とはそれ以上にもっとずっと一緒に居たいんだ」 俺は左手をハルヒに差し出して、言葉を続ける。ハルヒは何かしら? って感じで見ているが、このままいくぜ。 「ハルヒ。世界を大いに盛り上げるための俺を、一生よろしく」 「よろしくってキョン、左手の握手は敵対の意思だって何かで聞いた事無い?」 しまった、回りくどすぎて通じてない。俺はハルヒの左手を取り右手でポケットから取り出した指輪を見せる。 「つまり、こういう事だ。握手ならお前の言う通りだが、プロポーズなら左手じゃなきゃダメなんだ」 ハルヒは顔から湯気が出んばかりに真っ赤になっている。 「それって…つまり…」 「俺がお前の世界を一生盛り上げてやる。だから俺と一緒になって欲しい」 まあ、就職を控えてこれから問題は山積みだと思うから、今は婚約という形になるんだがな。俺の言葉にハルヒは頷いてくれた。 ハルヒの左手の薬指に指輪を嵌める。サイズはぴったりだ、これは協力してくれた長門に感謝だな。 「団長のセリフを取るなんて雑用にあるまじき行為ね。でもいいわ、あたしとあんたで世界を大いに盛り上げてやりましょう」 ハルヒは涙を零しながら俺の胸に飛び込んできて、そう言ってくれた。ありがとう、ハルヒ。 でだな、大学の話辺りからは俺の回想の一部だったりするんだが。 こんな俺にとってはこっ恥ずかしい事を回想させる原因というのはだ、にやけた面でこれでもかと暴露してくれるあの男、古泉一樹 のせいなわけで。そして今は俺とハルヒの結婚披露宴の真っ最中なのだよ。 「この様に彼は彼女のハートを射止める事になったわけですが、いやはや、周りの友人達もようやくかと安堵した事でしょう。 彼の鈍感さやヘタレッぷりは有名ではありますが、親友として僕がした心配の数は片手どころか両手を掛けた数でも足りません。」 「おい、一樹。お前なんでそんな事まで知ってんだ、それは俺とハルヒしか知らんはずだぞ」 「あたしが古泉君に教えたの。友人代表の挨拶に指名されたから、ネタを提供してくれって」 俺の隣に座るハルヒがしれっと言う。何て事をするんだハルヒ、あいつに喋ったら全部ここで喋っちまうぞ。 「いいじゃない。あんたの恥ずかしい思い出だけど、あたしには嬉しい思い出なんだもん」 ぐう、こいつかわいい事言ってくれるじゃねーか、しかし一樹、お前は殺す。 「ふふっ、僕がされた事をお返ししているだけですよ。僕はこの時をずっと待っていたんですから、ええ、ずっとね」 俺が一樹の結婚式でやらかした、友人代表の挨拶をまだ根にもってやがるのか、何年経ったと思ってるんだ。 「とはいえ、ここまでにしておきましょうか。随分時間も押している事ですしね、す・ず・み・や・君」 やっぱり、お前は殺す。お前にその名で呼ばれると寒気がするわ。 「そうそう、最後に会場の皆様に彼が涼宮家に入る事を決めた時のセリフをお教えしましょう。彼は涼宮さんのご両親にご挨拶した 際にこう言ったそうです。『自分のくだらないこだわりですが、ハルヒにはいつまでも涼宮ハルヒでいてほしいんです』とね。 まったくもって彼らしいじゃないですか、本当に彼らしい愛情の注ぎ方だと僕は思います。今日この日に夫婦となった彼らは、きっと 幸せな家庭を築いていけると僕は信じています。…信じたからにはお願いしますよ、涼宮君」 なんとなく良い話風にまとめてるが、そのにやけっぷりで感動も半減だ、こんちくしょう。なぜだか会場はどっと受けてるし、笑うなお前ら。 「古泉一樹、そこまで」 友人代表として一樹と並んで立っている長門が、一樹を制する。 「そうですね、では新婦友人代表、長門有希さんにバトンタッチ致します」 一樹からマイクを受け取り、長門が俺たち2人の方を向く。 「ハルヒ、結婚おめでとう。あなたが彼と結成したSOS団に私を加えてもらった時から10年、わたしはあなた達2人にいろいろな物を もらった。それはわたしにとってとても大切な思い出、2人はわたしにとってとても大切な友人。その2人が今日結婚するという事を わたしは自分の事の様に嬉しく思う。古泉一樹が言う様に、わたしもあなた達2人がこれからずっと幸せに暮らしていけると信じている。 本当におめでとう」 長門の挨拶は短い物だったが、俺にはこれで十分に伝わってきた。 「ぐすっ。ありがとう有希」 ハルヒも俺と同じなのだろう、涙を貯めて長門を見ている。だがこの後の長門のセリフは、場の空気を凍らせる物だった。 「彼にも一言ある。浮気がしたくなったらわたしの所に来て、待っている」 よく、コーヒー吹いたとか言うよな。だがな人間本当に衝撃を受けた時には、吹くよりも垂れ流すと俺は主張したい。 なぜなら今俺は飲もうとしたビールをだばだばとこぼしているからだ。 そして横に居るハルヒは俺の方を見て怖い顔をしていらっしゃる。ああ、マジで怖い。 「あんた、もしかしていまだに有希にちょっかい出してるんじゃないでしょうね」 「んなわけあるか、いっつもお前がべったりなのにそんな暇があるものか」 痛いです、ハルヒさん。ヘッドロックで俺の頭を痛めつけるハルヒ。長門よここでそれは無いんじゃないか。 「ジョーク」 それは笑えんぞ長門。いいかげん離せハルヒ。 「ダメよ有希。こいつはあたしんだからジョークでも浮気なんかさせないんだから」 ヘッドロックがいつの間にか頭を抱えて抱きしめてる体勢に移行している。 くそ、一樹はニヤニヤしてるし朝比奈さんも真っ赤になってアワアワ言ってる。 当の長門といえば薄っすらと微笑みを浮かべ俺達を見てやがる。ちくしょう、くやしいがいい笑顔だぜ長門。 時間が押してるからかは知らんが、慌て気味の司会がそれでは皆様しばらくご歓談下さいと言うと、場の空気が戻る。 参加者達がそれぞれ思い思いの会話をはじめ、俺とハルヒの席には団員達が揃い、長門がハルヒに話しかけている。 「彼はあなただけを愛している、浮気の心配はない」 いや、お前もいい話でまとめてるけど途中がダメだろ。そこんとこ、もうちょっと考えてくれ長門。 「まあ、いいわ。有希、古泉君、みくるちゃん。これからもあたし達と一緒に世界に羽ばたくのよ。それがSOS団の使命なんだからね」 ハルヒは両手を長門と朝比奈さんの肩にまわし、ぎゅっと抱き寄せる。誰かカメラ持って来い。 「最初に気付いた時は本当にあなたらしいと思いましたよ、あなたが涼宮という姓にこだわった理由。あなたの家に嫁いで姓が変わ ったらSOS団にはなりませんからね。違いますか?」 一樹が俺の横でしたり顔で話しかけてくる、うっせぇ、その通りだがお前に言われると腹が立つわ。 生きていく中で変わっていく物があるなら、逆に変わって欲しくない物もある。俺にとってはそれがSOS団でありハルヒなんだよ。 俺の中で大学時代には変わらなければ良いなだったものが、今は変えたくないものになった。 俺はその為の努力を惜しまない、どんな事もハルヒと2人で、いや、お前らも含めた5人でいれば俺は乗り越えていけると思うんだ。 「だから、改めて言っておきたい。世界を大いに盛り上げるための俺達をこれからもよろしくってな」 長門さんと涼宮さん 最終話 おしまい コメント 最終話となった『長門さんと涼宮さん』です。ただ長門さんと涼宮さんという形ではなくなってしまっています。 前回は長門さんとキョンくん、今回は涼宮さんとキョンくん、と言ったところでしょうか。 途中からのシリアス路線への変更故に、芯の通らない話になってしまっているとは思います。 しかし、どんな形であれ終わらせる事が出来たのは素直に嬉しいと感じています。 読んだ方に少しでも面白いと思ってもらえれば幸いであります。 キョンが走る場面、えらいくどい感じで書いてますがキョンの必死さを出す為にわざとやってみたんですが どうですかねぇ? うまく伝わるといいんですが、やっぱりくどすぎる気もします。 後は学校でのハルヒとのやり取りが、ご都合主義的展開でさらっと済ませてしまったかなとも思っています。 結婚式でのキョンの古泉に対する呼称を『一樹』にしたのは、年月を経て立場を超えて友人となった2人を 表わしたいと思ったんですが、前振りが無いと違和感バリバリですよね。 何気に長門にも『ハルヒ』と呼ばせています。こちらも同じ理由なんですが、やっぱり唐突すぎますね。 ついでにエピローグ時の古泉は既婚という設定ですが、相手は特に決めてません。 仲間内の誰かでは無く、どこかの知らない人というふうに考えました。 けして長門ではありません、古長の組み合わせは結構苦手なので。 それと、キョンを婿入りさせたのは本名不詳なのもありますが、結婚ネタのSSでもあまり見ない展開かなと 思い、入れてみた次第です。 全然どうでもいい話ですが、シリーズ内に変に古いネタを入れる縛りを自らに課しています。 侍ジャイアンツとか関根勤のカマキリなどおっさん丸出しのネタをキョンに言わせています。 意味があるのかと言うと全く無くて、単なる自己満足なのでスルー気味でお願いします。
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ジュニア最古参に数えられる。 涼宮ハルヒの憂鬱のキャラクターである「長門有希」と「生徒会長」を合体させた。 昔は配信を頻繁にしていたようだ。 愛称は「長門」。 荒らしに絡まれやすい。 実際、配信中に荒らしにあっているが本人は楽しんでいる。
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困った。 わたしにしては珍しく、そう思う。 時刻は午後五時、場所はわたしの部屋。 ここにいるのはわたしと古泉一樹。 稀な組み合わせ。 しかし彼は、 「うわー、広いー」 ――七歳児。 「何もなくて、寂しくないですか?」 彼は子供の様に無邪気に――実際にオツムも体も七歳児だけれど――言う。 「カチンと来て」思わず呟く。 「……余計なお世話」 困った。 もう一度思って、溜め息をもらす。 この状況下に置かれてから加速度的にエラーが増加している。 このままではいつ暴走するか分からない。 そうなる前に解決策を探さないといけない。けれど、 「ここ開けてもいい?」 和室の扉を指差して首を傾けて、尋ねる。 その「愛くるしい」様子に何とも言えないもの(これもエラー)を覚えた。 認めざるをえない。わたしはこの状況を『楽しんで』いる。 「有希ねえ」 と、何かに突き動かされるように言った。 「?」 古泉一樹(七歳児)が不思議そうにわたしの目を見つめる。 「『有希ねえ』と、そう呼んで」 作り物の体の奥からわき起こる『激情』に身を委ね言い切る。 「貴方はわたしより年下」 古泉一樹はやはり幼少時代から理知的だったのだろうか、 高校時代の雰囲気を見い出せる顔に理解の笑みを浮かべ、 「有希ねえ、ここ開けていい?」 ……もしかしたらわたしにはこういう属性があるのかもしれない、心拍数が増加する。 種類を問わずに本をあさって生まれた性癖だろうか。それとも思念体の趣味だろうか。 自分が変態か、親が変態か、ある意味において究極の二択。 しかし、出来れば後者であって欲しい。……「人」として。 そんな苦悩の海を泳ぐわたしに彼は、 「大丈夫? 顔が赤いよ」 顔と顔の距離、わずか十センチ。吐息のかかる距離。 「のーぷりょぶれむ」 噛んだ。盛大に噛んだ。慣れない事はするものではない。 格好つけて滑る事程格好がつかない物はない。 「大丈夫」 仕方なく言い直した。「恥ずかしさ」で体温が上昇する。 いけない。ビー・クール。ビー・クール、ユッキー。 うん。何かの制汗剤のようなフレーズ。 クールユッキー新発売。 ……落ち着こう。 その為にこの状況の原因を振り返るのは悪くないとわたしは信じる。 それは遡ること一時間五十分前。 ……… …… … わたしが本を読んでいると、機関の森を名乗る女性から電話がかかって来た。 けれど、適当に相槌と沈黙を挟んでやりすごす事にした。 普段からそんな感じ、慣れている 『突然のお電話すいません』 「……いい」 ハラリとページを捲る。 『実は古泉が行方不明なのですが』 ……なんだ、そんな事か。 古泉一樹が何時、何処で、誰に、『ナニ』をして、捕まろうがわたしには関係ない。 それより今は良いとこ。邪魔しないで。 なんと、主人公が意を決してポニテ萌えをヒロインに伝達しているクライマックスのシーン。 『知りませんか』と彼女は尋ねる。 「知らない」と答えつつページをめくる。 「……」 しかし、直後の挿絵のキスシーンにエラーを検出する。きっと何処かの二人に似ているからだろう。 わたしは思わず本を壁に投げた。 すると、本は壁を貫通し、穴を穿つ。いけない、慌てて壁を再構成する。 ……ついでに自白すれば、この本はいつもこのシーンで諦めてしまう。 きっと最後は無口な文芸部員の宇宙人と主人公が結ばれるはずだが、 この心掻き乱す挿絵のせいで確認がとれていない。損をした心持だ。 毎回毎回、壁に投げては穴を開けている。 今月はもう十回目だ。ちなみに最高記録は一日に五回。 あの「暴走」した冬の日だ。あの日はどうにも収まらなくて、結局世界を改変してしまった。 どうすれば良いのか。無口読書キャラとして読めない本があっては女が廃る。 わりと深刻に悩んでいたわたしは、森園生の抑えた「聞いてないですね」との問いに、 「そう」と条件反射的に答えてしまい、下唇を噛んだ。 この森園生、中々の策士である。喜緑江美里には劣るが。 『……』 「……」 ああ、宅配便でも来ないだろうか。この沈黙はわたしには重い。……普段は何ともないけど。 と、図ったようにインターフォンがなる。誰だか分からないけど、ぐっじょぶ。 「お客さん」 『はい?』 「しばらく待ってて」 『あ、ちょ――』 わたしはゆっくりゆっくり歩を進める。そして、 「……」 『長門、俺だ』 「はいって」 彼だった。声が裏返ってないといいけど。 心情的にはエクスクラメーション・マークを六個程付けたかったが、キャラ的に慎んだ。 「お客さんが来た。切る」 『……そうですか』 声に「もう頼んねーよ」な雰囲気が漂っていたので、遠慮なく切った。 バイバイ。森っち。 「お邪魔します」 「……?」 子供の声だ。不審に思いつつ玄関に向かった。そこでは彼が困ったように笑っていた。 「よう、長門」 その横に小学校一年生くらいの見覚えのある男の子がいる。 「実はこいつ、古泉だ」 全世界が停止したかに思われた。 少なくともわたしはコンマ一秒の間それに反応が出来なかった。 「いや、それ普通やーん」 「何か言ったか」 彼の問いに緩慢に首を横に振った。 ……まさか口に出ているとは。セルフ・ノリ・ツッコミは危険だ。 「……」 とりあえず誤魔化す為に彼の目をじっと覗いた。 それから古泉一樹らしい少年を見た。 「ああ、そうだったな……つまり」 それだけで通じるんだから素晴らしい。 でも出来れば最初に込めた「だいすき」な視線にも気付いて欲しかった。 「今日、話があるってんで古泉に呼び出されたんだが――」 本当は会話を省略するべきではないと思うけど、彼の言葉はわたしだけの物。 「――ってな訳だ」 それに話の要旨は「突然古泉一樹が縮んだ、どうしよう」だけ。 「そう」と、とりあえず言った。 言いつつ、頭の中ではこうなった原因を熟慮している。いや、考えるまでもない。 原因はアポトキ――げふんげふん。涼宮ハルヒに違いない。 「だよな……」 彼は物憂げに息を吐く。 「おそらく」 「何が不満なんだ、あいつは」 分からない。 ……どうせなら彼を小さくすれば良かったのに。 きっと一目見ただけで失神できるほどに可愛いだろう。 わたしなら即お持ち帰りする。 そして抱き枕の様に腕の中に収めて一晩を明かしたい。 「……おい、長門大丈夫か? 顔が赤いぞ」 「だいじょうぶ」 グイっと親指を立てて健康体アピール。でも、思うに……これは逆効果。 「ちょっとすまん」 案の定、戸惑った彼の手が額に触れる。あったかい。 「熱はないみたいだが……」 彼は顎に手を当て考え込む。 「今日はいったん古泉を連れて帰るよ。 機関の関係者に連絡がつけばそれが一番なんだがな」 そう言って立ち去ろうとする彼。対して古泉一樹(七歳児)はわたしの袖を掴み、 「僕かえりたくない」 ワガママを言わないで。 本当はわたしだって彼の袖を掴んで「今夜は……かえさない」としたい所を、ぐっと堪えているのに。 これだから子どもは……。 「おい、ワガママ言うんじゃない」と諭されると、 「僕、ださいからお兄ちゃん嫌い」 ……うわ。 「は、ははは……長門、すまん、帰るわ」 余程衝撃だったのか、わたしの返事も聞かず、古泉一樹を残し、出て行く彼。 玄関の戸が寂しい音をたててしまる。 取り合えず隣の残酷なまでに無邪気な少年に言っておいた。 「その生意気な口聞けなくすんぞ」と。 当然、今のはスペースジョーク。ほんとは…… 「古泉一樹」 「何?」 「その小生意気な口を聞けなくする」 「え、怖……あ、ちょ――」 … …… ……… そんな訳である。 大人に対する口のきき方を教えてからは、 わたしの知っている古泉一樹の口調に微量近付いたようだ。 「有希ねえ」 でも、破壊力抜群……。鼻血が。 「お腹が空いた」 その主張に、 「……カレーは好き?」 この少年、ほんの数瞬考えてから、「好きです」と答えた。 ふふん。まだ、甘いな。 真のカレー好きは訊かれるより先にカレー好きをアピールしなければいけない。 早弁はカレーパン。 弁当は当然カレー。 香水の替わりにカレー粉を体に吹き付け、 髪をカレー色に染め、 懐にガラムマサラを常備っ。 これぞ真のカレーラー……語呂が悪い。 では、カレラー? 外人みたいだ。でもカラーだと意味が違う。 よし、カレーフリーク略してカレフリ。……捕まりそう。取りあえず、 「夕飯はカレーにする」 「えー、でも今日は暑いで――」 わたしは彼の頭を撫でつつ目を覗き込んで言った。 「カレーは好き?」 「はい」 「夕飯はカレー、文句は」 「ないです」 よし、平和的に解決した。 これは喜緑江美里に教わったやり方。 しかし、彼女は笑んでるだけで話が進む。 残念ながらわたしはまだその域に達していない。 あ、でも、部費の調整会議の時は上手くいった。 「笑い」ながらじっと目を見る。それだけがポイント。 話が逸れた。 夕飯の準備をしよう。わたしは冷蔵庫からキャベツを一つ取り出した。 「僕キャベ――」 わたしは古泉一樹の頭を撫でつつ以下略。 キャベツを刻み終えると、今度はレトルトパックを取り出した。 「それ手ぬ――」 わたし以下略。 「出来上がり」 いつかの食卓がそこにはあった。 ふと考えればこの手料理(わたしは断固そう主張する)をもう三人に振る舞った事になる。 となると残った一人――涼宮ハルヒもこれを食べる日が来るのだろうか? ……。 ハバネロを買っておこう。 『いただきます』 わたしたちは手を合わせ同時に言った。 古泉一樹(七歳児)はそこら中に撒き散らかしながらカレーを頬張っている。 後で掃除をするよう「交渉」しよう。 「自主的」に古泉一樹が皿洗いをしてくれるので大助かりだ。 将来はきっと良い旦那さんになるだろう。 「疲れた」 乱暴に座布団に座る古泉一樹。 「有希ねえ人使い荒すぎます」 そんな事はない。わたしの知り合いにもっとすごい人がいる。 ところで、疲れた? 古泉一樹は首を深く前後させる。しょうがない、労ってあげよう。 「来て。……違う、そう」 身振り手振りでようやく意図した体制になる。いわゆる膝枕。 耳が赤くなってる彼の頭を撫でながら、いつかどこかで聞いた「子守唄」をくちずさむ。 すぐに小さな寝息をたて始めた。 その幸福の音につられるように、いつしかわたしも夢の世界へ誘われ……。 … …… ……… 「あの、長門さん」 ふと、腹部の辺りから聞き知った声がする。 「戻った」 「ええ、戻りました。それで……」 困ったような声が要求することをわたしは即座に実行した。 「どうも」 「いい」 体を起こした古泉一樹と向き合う。 ……さっきまでの自然な笑い顔の方が良いと思う。 「まあ、色々無理してますから」 「そう」 「それにしても幼児退向とは、涼宮さんも中々凄いことを考えましたね」 「原因は不明」 わたしが言うと、更に不自然な笑みを浮かべた。 「心当たりはありますよ」 ちょっと迷ってから、言う。 「聞かせて」 「実は先日涼宮さんから愚痴を聞かされたんです『彼』がノラリクラリとしてるのは、 僕みたいな『頼りになる』人が身近にいるからじゃないかとね」 なるほど。原因は理解した、でも。 「なぜ戻った」 「さあ、こればかりは神のみぞ知る、ですね。あるいは彼が男を見せたのかもしれませんが」 「そう」 それにしても残念だ。さっきまでの古泉一樹はだいぶ可愛げがあったのに。 「それで有希ね――」 言い間違えて彼は赤面した。わたしは手元にあった文庫本で口を覆った。 きっと今は口元が「にやりと」している。 「それで構わない」 くぐもった声が言う。 「いや、長門さんがそうでも僕のほうに問題が……」 「なら返事しない」 わたしはきっぱりと言った。 「へ? ……いや、あの長門さん」 無視。 「長門さーん、長門有希さん、長門ちゃん、長門っち、戦艦、ゆきっこ、ちょうもん、ゆきりん、ゆきゆき……」 余計な語句が混じっているから、わたしは彼を二、三発文庫ではたいた。 ……ともかく、わたしは気付いたのだ。 どうやらわたしは「そういう」趣味なのではなく、単に年上扱いされたかっただけなのだと。 朝倉涼子然り、喜緑江美里然り、涼宮ハルヒ然り……。 わたしの周りにはわたしより年上の様な人物ばかりいる。だから、少しは姉貴風を吹かしてみたい。 結局、古泉一樹が折れるまでにもう三十分要した。 「有希ねえ、……これでいいんですよね?」 「そう」 わたしは満足げにうなずいた。 終わってくれ。